中里透(2002) 「財政政策の非ケインズ効果をめぐる論点整理」(井堀利宏、加藤竜太、中野英夫、中里透、 土居丈朗、 近藤広紀、 佐藤正一 「財政赤字と経済活動:中長期的視点からの分析」第2章)『経済分析』第163号、2002年3月、71-90ページ。
非ケインズ効果が生じる基本的な理由は次のようになる。政府主体の最適行動は課税平準化によって異時点間の資源配分の歪みを最小化することである。それにも関わらず、現状の税率は過剰に低く抑えられており、税負担が先送りされている、という場合を考える。このとき、 現時点における増税は課税の歪みを改善し、 恒常所得を向上させる。消費者がforward lookingで合理的な最適行動をとるとき、増税によって消費活動をむしろ活性化させることができる。これが非ケインズ効果である。
非ケインズ効果が生じやすい状況は次のようにされている。 まず、家計の流動性制約が小さいような状況である。流動性制約があるとき消費平準化ができず、forward lookingな行動をしないからである。 次に、最適税率が高く、 現状の税率が低いような状況である。すなわち、税負担を先送りしているとき、資源配分の歪みが生じる。また、政府支出の国内総生産比が小さいという状況も挙げられている。これは政府支出の拡大余地が大きいために財政改革が行なわれにくいという意味である。そして、政府債務残高の国内総生産比が大きい状況である。以上の状況で非ケインズ効果が生じやすいとされている。
実証研究が信じられるのかどうかはよくわからん。
2009/06/14
武石(2003)
武石彰(2003)「分業と競争―競争優位のアウトソーシング・マネジメント
」有斐閣。
取引関係を考察するときは取引関係だけ、組織内の動態を考察するときは組織内だけであるのが普通に思われるが、武石は取引関係と組織内を関連させた。すなわち、競争的にアウトソーシングを行なうためには、それなりに内的なマネジメントが重要となってくるのである。武石の実証分析では、三点のインプリケーションが得られている。
第一に、内的マネジメントの重要性である。理論家にとっても実務家にとっても、アウトソーシングに際して組織の外に問題があると考えがちだが、組織の内部にも眼差しを向けるべきなのである。アウトソーシングを活用している企業は、当たり前の工夫や仕組みを全体のバランスを保ちつつ、着実かつ長期的に営んでいることがわかった。ところが、当たり前のメカニズムは難しいもので、ひとつひとつの企業が取り込むことができないのである。
第二に、知識のマネジメントの重要性である。企業の境界という問題と知識の境界は一致しないということである。アウトソーシングをしつつも、新しい技術をいかに取り込むかということが課題となり、そのために相互の知識領域が重複するような分業が求められる。米国は流動的な人事から知識が一巡するが、日本の場合でも企業グループ内での人事異動は活発であった。専門分野の外との知識共有がなければイノベーションは生まれないので、企業を越境する知識共有が必要である。
第三に、アウトソーシングのマネジメントの重要性である。アウトソーシングを競争優位に結びつける既存の理論として、第一にはコア・コンピタンスに集中するということであり、第二には外部の企業との協力関係を気づくということであった。これらの競争優位は必ずしも達成できないが、努力と工夫があれば可能であることがわかった。それに重要なのが内部組織や知識のマネジメントであり、イノベーションに対して主体的に関わるためには長期的で全社的な戦略をとるという立場が必要となるのである。
取引関係を考察するときは取引関係だけ、組織内の動態を考察するときは組織内だけであるのが普通に思われるが、武石は取引関係と組織内を関連させた。すなわち、競争的にアウトソーシングを行なうためには、それなりに内的なマネジメントが重要となってくるのである。武石の実証分析では、三点のインプリケーションが得られている。
第一に、内的マネジメントの重要性である。理論家にとっても実務家にとっても、アウトソーシングに際して組織の外に問題があると考えがちだが、組織の内部にも眼差しを向けるべきなのである。アウトソーシングを活用している企業は、当たり前の工夫や仕組みを全体のバランスを保ちつつ、着実かつ長期的に営んでいることがわかった。ところが、当たり前のメカニズムは難しいもので、ひとつひとつの企業が取り込むことができないのである。
第二に、知識のマネジメントの重要性である。企業の境界という問題と知識の境界は一致しないということである。アウトソーシングをしつつも、新しい技術をいかに取り込むかということが課題となり、そのために相互の知識領域が重複するような分業が求められる。米国は流動的な人事から知識が一巡するが、日本の場合でも企業グループ内での人事異動は活発であった。専門分野の外との知識共有がなければイノベーションは生まれないので、企業を越境する知識共有が必要である。
第三に、アウトソーシングのマネジメントの重要性である。アウトソーシングを競争優位に結びつける既存の理論として、第一にはコア・コンピタンスに集中するということであり、第二には外部の企業との協力関係を気づくということであった。これらの競争優位は必ずしも達成できないが、努力と工夫があれば可能であることがわかった。それに重要なのが内部組織や知識のマネジメントであり、イノベーションに対して主体的に関わるためには長期的で全社的な戦略をとるという立場が必要となるのである。
2009/06/13
Ljungqvist-Sargent 26.7.
Kiyotaki, Nobuhiro and Randall Wright (1993) "A Search-Theoretic Approach to Monetary Economics," AER.
清滝信宏「貨幣と信用の理論」
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/1993/kk12-4-6.pdf
Kiyotaki-Wright modelでは貨幣をsearch and matchingで描写している。
・(0,1)の中で無限に存在する個人は(money,commodity)のどちらかの状態を選べる。
・貨幣供給量MによってM:1-Mの割合で状態が分かれる。
・交換によってcommodityを手に入れた場合、commodityをリフレッシュすることができ、効用Uをゲット。
・(commodity)状態の個人同士では物々交換の費用εが発生。
・(commodity)状態の個人は確率xでしか取引に応じない。
・交換相手を見つける確率はθであり、物々交換も売買も確率は同じ。
・(money)状態の個人は、(commodity)状態の個人がさらにΠしか売買に応じない、と知っている。
・ただし、(commodity)状態の個人はπを選ぶことができる。
このとき(money)状態の評価関数は
![V_m=\\ \theta(1-M)x\Pi(U-\varepsilon+\beta%20V_c)\\ +[1-\theta(1-M)x\Pi]\beta%20V_m](https://lh3.googleusercontent.com/blogger_img_proxy/AEn0k_vEeAfW70zYqsD2VjfZ5JhmAbPUjShUCadgBbqw0WfasbdcfPCMW77WPjIUUVR-48HqNy_r7fKgIestD8G7bLpx3r4c506tbJpavH-wh-hJ1lCw0b54w1qUdFSFtTlGg8QdmifJSyMBSOxNuKNRfG2Q4uQ_iusv48osZpDLsI0ER8QR3lbD0joJlyhYDNHiqWB_Mfp96qxRBdd6fRNhO3KapXNn13wzGhzg20dViK9mYg=s0-d)
(commodity)状態の評価関数は
![V_c=\\ \theta(1-M)x^2(U-\varepsilon+\beta%20V_c)\\+\theta%20Mx\max_{\pi}[\pi\beta%20V_m+(1-\pi)\beta%20V_c]\\%20 +[1-\theta(1-M)x^2-\theta%20Mx]\beta%20V_c](https://lh3.googleusercontent.com/blogger_img_proxy/AEn0k_uR3AosTdqi7Q__PM_5Bk_eBVW84yIOBJCLPDx8pgo7JjnPvGC5uOb0mdRy046RRbHsrJ7Iy7oo_awRSnExL4Q5C31TOFxEe2h7nDyjCVsjJURmBGiCoIQW-UjCKdxbj3eapq_mskRdh7wJrHD6nAlLHdRfC_wnCdAhYw0HX-CH2qpkno3b5BbnEpZE_0_DQSdQ7I0nKVZmzTw_f7ejYZZIPKKQWwINH0T_sPZneTMitvbz2fry-Q47D7NFLnnSbyIYg7pPbj6vHMdMEXjZNBaH66dciNoe7k1Up5Ol2VXNU18e2nhAe1PwhmXN9Ubk7MnWfqspbINLu2hxuBdJfZNc1ExB7PCkH-UCVGs=s0-d)
上記のmax関数が肝となって複数均衡となる。
清滝信宏「貨幣と信用の理論」
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/1993/kk12-4-6.pdf
Kiyotaki-Wright modelでは貨幣をsearch and matchingで描写している。
・(0,1)の中で無限に存在する個人は(money,commodity)のどちらかの状態を選べる。
・貨幣供給量MによってM:1-Mの割合で状態が分かれる。
・交換によってcommodityを手に入れた場合、commodityをリフレッシュすることができ、効用Uをゲット。
・(commodity)状態の個人同士では物々交換の費用εが発生。
・(commodity)状態の個人は確率xでしか取引に応じない。
・交換相手を見つける確率はθであり、物々交換も売買も確率は同じ。
・(money)状態の個人は、(commodity)状態の個人がさらにΠしか売買に応じない、と知っている。
・ただし、(commodity)状態の個人はπを選ぶことができる。
このとき(money)状態の評価関数は
(commodity)状態の評価関数は
上記のmax関数が肝となって複数均衡となる。
2009/06/11
Ljungqvist-Sargent 26.3.
Lucas (2004)
(参考)Microfoundationsをめぐるhimaginary日記
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090608/levitt_and_yglesias_on_macro
計量経済学に使えるマクロ経済のデータは少ないので現実を的確に描写するモデルよりも、ミクロ的基礎付けからゴリ押しした数式モデルが評価される、と否定的な論争。
それはまた別の話。
Lucas, Robert E., Jr. (2004) "Keynote Address to the 2003 HOPE Conference: My Keynesian Education"
http://homepage.ntu.edu.tw/~yitingli/file/Workshop/lucas%20.pdf
(...)Now it’s coming in use in macroeconomics with real business cycle theory; certain kinds of monetary variations have been introduced with success. (...) But I don’t teach any IS-LM. I don’t even mention it. (...) In that sense, for me, it’s over.
But I want to come to this persistence of the IS-LM model, because it isn’t over.
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090608/levitt_and_yglesias_on_macro
計量経済学に使えるマクロ経済のデータは少ないので現実を的確に描写するモデルよりも、ミクロ的基礎付けからゴリ押しした数式モデルが評価される、と否定的な論争。
それはまた別の話。
Lucas, Robert E., Jr. (2004) "Keynote Address to the 2003 HOPE Conference: My Keynesian Education"
http://homepage.ntu.edu.tw/~yitingli/file/Workshop/lucas%20.pdf
(...)Now it’s coming in use in macroeconomics with real business cycle theory; certain kinds of monetary variations have been introduced with success. (...) But I don’t teach any IS-LM. I don’t even mention it. (...) In that sense, for me, it’s over.
But I want to come to this persistence of the IS-LM model, because it isn’t over.
2009/06/10
Ghoshal (1987)
Ghoshal, Sumantra (1987) "Global Strategy: An Organizing Framework," Strategic Management Journal.
国際経営戦略のまとめ。
国際経営戦略のまとめ。
| 戦略の目的 | 国と国の違いを活かした利益 | 規模の経済による利益 | 範囲の経済による利益 |
|---|---|---|---|
| 既存の生産体制の効率化 | 労働者や資本財が安いところへの投資 Kogut (1985a) Itami(1978) Okimoto, Sugano and Weinstein (1984) | 生産規模のさらなる拡大 Hout, Porter and Rudden (1982) Levitt (1983) Doz (1978) Leontiades (1984) Gluck (1983) | 製品・市場・事業を横断する投資や資本の共有 Hamel and Prahald (1985) Hout, Porter and Rudden (1982) Porter (1985) Ohmae (1985) |
| リスクマネジメント | 市場リスクや政策リスクへの対応 Kiechel (1981) Kobrin (1982) Poynter (1985) Lessard and Lightstone (1983) Srinivasulu (1981) Herring (1983) | 経営戦略や生産の調整が可能となる規模の追求 Evans (1982) Piore and Sabel (1984) Gold (1982) Aaker and Mascarenhas (1984) | 分散投資 Kogut (1985b) Lorange, Scott Morton and Ghoshal (1986) |
| イノベーションの学習と適用 | 組織やマネジメントにおける各国特有のプロセスやシステムからの学習 Westney (1985) Terpstra (1977) Ronstadt and Krammer (1982) | 経験曲線効果 BCG (1982) Rapp (1973) | 製品・市場・事業を横断する学習の共有 Bartlett and Ghoshal (1985) |
2009/06/01
Krugman (1979)
Krugman, Paul R. (1979) "Increasing Returns, Monopolistic Competition, and International Trade," Journal of International Economics.
Closed Economy
Utility Function (Love of variety)
Labor Demand Function
Goods Market
Labor Market
Homogeneity
Equilibrium
Profit Maximizing (PP Curve)
Zero Profit (ZZ Curve)
右上がりなPP Curveと右下がりなZZ Curveを(c,p/w)上にプロットする。x=Lcから生産水準が決定。
財のバラエティは、労働市場の均衡から
Open Economy (Effects of Labor force growth)
貿易の開放はLの増加によってZZ Curveを左シフトさせるので、均衡となるcは減少する。Lの増加とcの減少を財のバラエティの式に入れて、財のバラエティは増加する。PP Curveが右上がりなためにp/wが下がるので、ZZ Curveの式からxは上昇する。
Open Economy (Effects of trade)
効用関数・生産技術・要素賦存量が同一の二国間では輸出入が均衡している。ただし、財のバラエティが増えることによって効用そのものは増加する。
Effects of factor mobility
生産要素の移動性が高いと、貿易障壁があったとしても、開放経済的になる。Mundell (1957)がHecksher-Ohlinについて成り立つことを示しているが、Krugman (1979)においてもこれが言える。
ただし、貿易障壁があるとき、労働者は特定の都市に集積してしまうだろう。それは人口の大きい都市ほど、実質賃金が高く、財のバラエティも大きいからである。というわけで初期の人口分布が変であっても、歴史依存的に人口集積が起きてしまう。
Closed Economy
Utility Function (Love of variety)
Labor Demand Function
Goods Market
Labor Market
Homogeneity
Equilibrium
Profit Maximizing (PP Curve)
Zero Profit (ZZ Curve)
右上がりなPP Curveと右下がりなZZ Curveを(c,p/w)上にプロットする。x=Lcから生産水準が決定。
財のバラエティは、労働市場の均衡から
Open Economy (Effects of Labor force growth)
貿易の開放はLの増加によってZZ Curveを左シフトさせるので、均衡となるcは減少する。Lの増加とcの減少を財のバラエティの式に入れて、財のバラエティは増加する。PP Curveが右上がりなためにp/wが下がるので、ZZ Curveの式からxは上昇する。
Open Economy (Effects of trade)
効用関数・生産技術・要素賦存量が同一の二国間では輸出入が均衡している。ただし、財のバラエティが増えることによって効用そのものは増加する。
Effects of factor mobility
生産要素の移動性が高いと、貿易障壁があったとしても、開放経済的になる。Mundell (1957)がHecksher-Ohlinについて成り立つことを示しているが、Krugman (1979)においてもこれが言える。
ただし、貿易障壁があるとき、労働者は特定の都市に集積してしまうだろう。それは人口の大きい都市ほど、実質賃金が高く、財のバラエティも大きいからである。というわけで初期の人口分布が変であっても、歴史依存的に人口集積が起きてしまう。
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