2009/08/31

安場保吉

安場経済学の意義とその背景

開発経済学で結構重要な先生。
安場先生のご研究は経済発展の理論的・実証的・比較経済史的研究に関わる,きわめて幅の広いものである。たとえば,アメリカにおける出生率の研究や米国奴隷制の研究はアメリカ経済史に大きな影響を残した。また,わが国で数量経済史(Quantitative Economic History)と呼ばれる分野における,戦前日本の生産指数や統計の信憑性の検討,日本経済の二重構造に関する考察,海上輸送と工業化についての研究等は学界の財産となっている。安場先生は1970年代からアジア諸国の経済発展にも関心を持たれ,この分野でもパイオニアとなられた。その上で,安場先生はその著書『東南アジアの経済発展:経済学者の証言』(ミネルヴァ書房,2002年11月刊)において,ご自分の立場を「新古典派ラディカル政治経済学」とまとめられた。

2009/08/29

Krugman (1994)

Krugman, Paul (1994) "Competitiveness- A Dangerous Obsession," Foreign Affairs.

製造業の衰退は消費構造の変化であり、貿易赤字のせいではない。
国際貿易はプラスサムであり、国ごとに競争するものではない。
参照→kuma_asset

Shin (2009)

Shin, Hyun Song (2009) "Financial Intermediation and the Post-Crisis Financial System," mimeo.

証券化は信用リスクを分散させるものであり、金融仲介が長いほど短期貸しと長期借りのギャップを埋めることができるとされていた。しかし、今回の金融危機はそれ以外の可能性を指摘した。証券化はレバレッジのかかったセクターにリスクを集中させた。短期債券は金融仲介業での貸し借りが大きく膨らんだ。金融仲介業同士は大きく絡み合うようになった。金融仲介の鎖が長くなることで、レバレッジの倍率とバランスシートの大きさが膨らんだが、鎖は短いほうが金融システムは安定的になる。

2009/08/24

Buera and Kaboski (2009)

Buera, F. J. and Kaboski, J. P. (2009), The Rise of the Service Economy, NBER WorkingPaper 14822.

原点から正の無限大までにサービスを配置して、パラメータが小さいほど簡単なサービスで大きいほど複雑なサービスとする。サービスは家庭で作り出すか、市場から調達するか選ばれ、工業製品はサービスに付随して消費される。家庭で作り出されるサービスはカスタム化可能なので高い効用が得られる一方、市場のサービスは低いコストで調達できる。

所得が上昇するにしたがって、より複雑なサービスが消費されるようになり、最初の段階では家庭ではなく市場から安く調達される。経済全体の生産性成長にしたがって、コストよりも効用のほうが重要になり、市場から家庭へと消費がシフトする。したがって、サービス財を消費せず→市場サービス財を消費する→家庭サービス財を消費する、というプロダクト・サイクルがみられる。一方で、低スキル労働者の世代が高スキル労働者に置き換わると、機会費用の関係で、家庭サービス財から市場サービス財へと消費行動が変わる。

この論文では、三つの事実をモデル化した。第一に、サービス財の消費が増え、GDPにおけるサービス部門の割合が60%から80%に増えたこと。第二に、低スキルなサービス業が衰退する一方で高スキルなサービス業が25%も増え、スキル集約的なサービス財の量と対価が増えたこと。第三に、大卒の給料と高卒の給料の比が125%から200%に増えたこと。

2009/08/19

Antras et al. (2006)

Antras, Pol, Luis Garicano, and Esteban Rossi-Hansberg, 2006. "Offshoring in a Knowledge Economy," The Quarterly Journal of Economics, MIT Press, vol. 121(1), pages 31-77, 02.

Model
様々なスキルをもつ人々がチームを組んで問題解決という生産活動をする。各チームはひとりのマネジャーとマネージャーのスキルに対応した労働者が就く。コミュニケーションコストが小さいほど多くの労働者で厚生可能である。
開放経済においては市場としてNorthとSouthを考える。SouthはNorthよりもスキルの上限が低い。SouthがどれほどNorthのスキルに追いついているかというパラメータとしてOverlapを設定する。Overlapにより均衡が二種類現れる。Southがすべて労働者になるLow Quality Offshoring EquilibriumとSouthにもマネジャーが残るHigh Quality Offshoring Equilibriumである。Communication costとOverlapが低いときLQEとなり、高いときはHGEとなる。

Globalizationの影響
LQEなときにはNorthの賃金格差が広がり、HQEなときには賃金格差は小さくなる。Northにおける限界収入はskillが高ければ増えるが、低ければ減る。

LQEなときにはSouthの低スキル労働者の賃金が上昇し、HQEなときには賃金は下がる。LQEなときにはNorthの低スキル労働者の賃金が下がり、HQEなときには賃金が上がる。最低水準のスキルを持つ人々は賃金が下がる。

Communication Costの低下
悪いマネジャーが労働者とうまく仕事ができる一方で、良いマネジャーが労働者とマッチしなくなる。労働者におけるスキルのバラツキが増えることによって、賃金格差が広がる。収入のベースラインは何の話なのかよくわからん。

Skill Overlapの増加
限界収入のバラツキが減る。収入のベースラインは上がる。労働者におけるスキルのバラツキが増えることによって、賃金格差が広がる。

2009/08/18

Iversen and Wren (1998)

Iversen, Torben and Anne Wren (1998) "Equality, Employment, and Budgetary Restraint: The Trilemma of the Service Economy," World Politics, July 1998.

1960年代まで製造業が雇用の中心だった。経済成長によって、必需財から工業製品へと需要が移り変わり、エンゲルの法則が働いた。さらに、生産性の向上から相対価格が下がり、マテリアル財(テレビ、家、車、家電など)の潜在的ニーズが満たされるに至った。製造業が経済成長を牽引し、雇用を吸収するとともに、実質賃金を引き上げたと言って良い。

1970年代後半以来の20年間で経済構造は大きく変化した。国際化によって政府の役割が限定的になるとともに、新興国が低賃金労働力を供給するようになった。賃金格差と失業の発生は公共部門の拡大によって緩和できるかもしれないが、財政規律との両立は難しい。

工業製品自体も市場全体に行き渡り、量より質が求められるようになった。工業製品の需要が伸び悩む代わりに、サービス財へと需要がシフトした。そして、サービス部門が成長の源泉となるに至っている。ところが、サービス部門自体は生産性の向上の余地がなく、雇用が拡大しているところは低賃金となる。公共部門で高賃金の雇用を確保することは可能だが、財政への負担となる。以上がサービス経済のトリレンマとなる。

エスピンアンデルセンの福祉国家レジームによってトリレンマにおける位置づけを分類できる。自由主義国家においては財政規律と雇用を重視する。保守主義国家においては財政規律と平等賃金を重視する。社会民主主義国家においては雇用と平等賃金を重視する。

Hicks(1937)

Hicks, John R. (1937) "Mr. Keynes and the 'Classics'; A Suggested Interpretation," Econometrica, Vol. 5, No. 2 (Apr., 1937), pp. 147-159.

Hicks(1937)はKeynesの一般理論をIS-LMモデルへと昇華させた。従来の新古典派のモデルでは、 I(Yf, i)=S(i), M=kYとなる一方、Keynesモデルは、I(i)=S(Y), L(i)=Mとなっている。新古典派では所得は完全雇用水準であり、 貨幣量との間に貨幣数量説が成り立って、貨幣の中立性が保たれる。このHicksに書き改められたKeynesモデルが初期のIS-LMモデルである。縦軸に利子率、横軸に所得をとれば、二つの関係式をIS曲線とLM曲線として図示することができ、経済を簡易に表現できるようになった。このIS-LMモデルを原型にマクロ経済学が発展したわけである。