2010/07/05
イノベーションへの解 収益ある成長に向けて
シュンペーターはイノベーションの例示として5つの新結合を挙げた。(経済発展の理論)
1)新しい財貨の生産
2)新しい生産方法の導入
3)新しい販売先の開拓
4)新しい仕入先の獲得
5)新しい組織の実現(独占の形成やその打破)
新興国の労働市場が開けてくると、生産部分を低賃金国に任せるオープン・モジュール方式が支配的になってきた。ひとつの製品をコアコンポーネントと汎用品で構成させ、利潤が薄い汎用品は他社に任せてしまう。ただし、コアコンポーネントでは高利潤を保ち、製品設計そのものは自社が握って、他社の追従を許さない。この流れは(2)(3)(4)(5)に相当するだろう。
(1)のイノベーションとしては、新製品の性質に関して、持続的イノベーションと破壊的イノベーションに分類できる。前者は単なる品質改善であり、生活習慣そのものを変更するものではない。一方で、破壊的イノベーションは生活習慣を変えてしまう新製品であり、それは「新市場型破壊」と「ローエンド型破壊」に大別できる。これは行動経済学的に説明できるのではないだろうか。
人々はそれぞれの満足度に「基準点」を持つ。もしボクが夕食に寿司が食べられるならば大いに喜ぶ。しかし、寿司屋が満員でアウトバックになった場合、素直に喜ぶべきなのに複雑な気持ちになる。つまり、既存の消費者は新製品を既存製品との比較で考えるが、無消費者は新製品を無消費との比較で考える。この「無消費への対抗」が新市場型破壊の鍵となっており、普段何気なく思っている「片付けるべき用事」を済ますために、新製品を「雇う」のである。「電車の待ち時間の暇を潰す」ためにニンテンドーDSを1万5千円で「雇う」ということである。そのために、市場調査というのは「得意としている製品ごと」や「職業や年齢層ごと」ではなく、「片付けるべき用事ごと」の軸でとらえるのが正しい。
ローエンド破壊は、高級メーカーと廉価メーカーを想定する。ひとつの製品カテゴリの中で、廉価メーカーは低品質製品を生産するが、高級メーカーは低品質製品に対抗するのではなく、高品質製品に利を見出す。そのため廉価メーカーは低品質製品で稼ぎ、その市場に定着する。ローエンドに定着した廉価メーカーは、低品質製品から高品質製品へと徐々に進出していく。高級メーカーが新製品を見出すことは難しく、高級メーカーにキャッチアップするだけの廉価メーカーの追い上げは容易である。市場を食われている分、高級メーカーの利潤率は低下しており、市場を食っている分だけ廉価メーカーは有利に働く。廉価メーカーは廉価品を基準点にしているから、高級品への上昇は容易い。高級メーカーは高級品を基準点にするので、それ以上の高級化が難しい。
結局は、「良いものを安く」ということが商売の秘訣のようである。「良いものなのに売れない」という態度や「高く売れるために良いものを作る」という態度ではいけないのだ。
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