2009/06/28

Today in The Zombieconomy (in Japanese)

Today in The Zombieconomy

ねえ、ぼくらの資本市場がどうして機能しないのか知りたくない?それは大抵の投資家が煽動・宣伝家で、企業をよりよく分析するというよりは、短命な「最新情報」を探しているからだよ。

実際の食料を生産するのはやめ、「食事の経験」を売り込む食品メーカーのように。

分析やレポートといった長命で質の高い内容を捨てて、低コストで使い捨ての芸能情報を好むメディア界のように。

21世紀版エネルギー革命・金融革命・教育革命・医療革命のような波を起こそうとするのではなく、アバターゲームに投資するベンチャー投資家のように。

ゾンビ経済にようこそ。レイオフと一緒にフライドポテトはいかがですか。

2009/06/26

Krugman (1980)

Krugman, Paul R.(1980) "Scale Economies, Product Differentiation, and the Pattern of Trade," AER.

Model
Utility Function

Increasing Return of Scale

Krugman (1979)

Equilibrium
FOC of UMP

Profit Maximization

Zero Profit


Open Economy
2-country

Iceberg Transport Cost
1/g units produced and shipped to deliver 1 unit.(0<g<1)
これは国外製品の消費に関わっていて、UMPのFOCから舶来品をどれだけ好むか定めることができる。


Balance of Payment
輸入品の消費に関する係数をσとしておく。
Foreign Consumption of Home Goods (Home Price)

Home Consumption of Foreign Goods (Foreign Price)

Relative wage and relative price

Balance of Payment (mesured in wage unit of foreign country)

σはωの増加関数で、σ*はωの減少関数であるので、トレードバランスが均衡する相対賃金が存在する。ω=1にしても必ずしも均衡しない。他の条件を同等とすれば、人口が大きい国ほど賃金が高いことになるらしい。
生産費がどこでも同じとすれば大規模な市場に近いほど輸送費が小さいので恩恵が受けられる。もし労働移動が制限されているならば、賃金の面で差が出てくる。


Home Market Effects
自国市場が貿易パターンに影響を与える。
財にはalphaとbetaの二種類があって、自国ではalpha財を多く生産して外国ではbeta財を多く生産すると考える。貿易によって自国と外国におけるalpha財の生産量の比は以下のようになる。

つまり、自国におけるalpha財の生産をゼロにすることはないのである。したがって、自国市場で比較的大量消費されていた財が集約的に生産されるわけである。

2009/06/25

Gu (2009)

Gu, Shi-Jian (2009) "Super Mario’s escape trip — a proposal of object-intelligent-feedback-based classical Zeno and anti-Zeno effects"

量子論へゲーム論を導入する画期的内容!

Abstract
スーパーマリオは悪魔によって有限井戸型ポテンシャルに囚われている。マリオは浮いている階段を使ってジャンプをすることで井戸から脱出することができる。しかしながら、憎たらしい悪魔は時としてマリオの状態を確認するかもしれない。その時彼は、脱走の発覚を避けるために即座に地面までジャンプするか、脱走プロセスのスピードを上げるか判断しなければならない。それゆえに、悪魔がチョー頻繁にマリオをチェックしたら、マリオが天井にある出口まで到達する確率はゼロになって常に井戸の中にいることになる。これは古典的なゼノ効果が働いていると考えられる。一方、チェックとチェックの間の時間が十分に大きいならば、マリオが高いところまで来ていて、もはや悪魔がどうもこうもできなくなる確率が高くなる。だから、悪魔のチェックは彼女の脱走スピードをアップさせて、古典的な反ゼノ効果が生じることになる。

近能(2002)

近能善範(2002)「自動車部品取引のネットワーク構造とサプライヤーのパフォーマンス」『組織科学』

競争優位の源泉に関して、競争環境に着目する外向きな見解と企業の保有資源・能力に着目する内向きな見解が主流になっている。構造的埋め込み理論はその中間であり、「競争優位をもたらす保有資源・能力の構築に対して、企業が埋め込まれているネットワークが果たす役割が大きい」と考えられている。

この論文では構造的埋め込み理論の立場にたって、自動車部品取引におけるネットワーク構造を分析する。もともと、個々の取引関係に関する実証研究は存在してたが、ネットワーク構造の差異が競争力にどのような関係をもたらすのかという研究はされてこなかった。

実証分析の結果、「主要顧客である自動車メーカーから見て重要度が高い存在となり、なおかつ複数顧客との取引関係を維持するサプライヤーは、部品の取引継続に有利な傾向が見られる」ということが明らかになった。要するに、取引先を増やすのみならず、取引先からの信頼や依存を勝ち得ることが重要ということになる。

2009/06/24

Dunning (1988)

Dunning, John H. (1988) "The Eclectic Paradigm of International Production: A Restatement and Some Possible Extensions," Journal of International Business Studies, Vol.19, No.1, pp.1-31.

Eclectic Paradigm
折衷理論とは海外直接投資に関する様々な既存研究を総括する理論らしい。その理論枠組みはOLIアプローチといって、第一に所有による優位、第二に内部化による優位、第三に立地による優位という順番で条件を見たときに全ての条件を満たすならば海外直接投資を行なうというものらしい。

O: Ownership
他にはない特殊資産を持つことを資産優位性、他にはない特殊取引関係を持つことを取引優位性と呼ぶらしい。

I: Intarnalization
Coaseの枠組みのように、市場の失敗を避けて組織で調達することが考えられる。そのためには組織を内部化することの優位性が高くなければならないが、これを内部化優位性と呼ぶらしい。

L: Location
おそらくこの段階では組織の内部化を行なうことは決定済みであり、あとは内部化の舞台となる立地を考えなければならない。こうした優位性は国とか地理とかに特殊的なものであり、海外直接投資の鍵になるようだ。

Restatement
以上のOLIアプローチはなかなかの批判を受けたらしく、Dunningは要素賦存量と市場の失敗の文脈で説明をしなおす。ここが論文の中心だと信じたい。その後ろのSome possible extentionsはまったく重要でない。

国際生産のタイプ立地優位性に関わる要素賦存量立地優位性と資産優位性に関わる構造的な市場の失敗取引優位性と立地優位性と内部化優位性に関わる取引的な市場の失敗
市場開拓国内において資産優位性を作りだされている。特殊資産が特定の国以外から調達できないとき、その国は立地優位性がある。

市場規模や市場特性も関係する。
生産要素を手に入れることに企業特殊性があるとか、貿易規制があると、売手寡占となる。探したり交渉したりするコストが小さいとか。
所有権に関わる法制度がしっかりしているとか。
リスク分散型国際ポートフォリオの一部にできるとか。
競合の行動から守ってくれるとか。
資源確保国内においては同上。市場規模と市場特性も考えられる。
生産要素や生産技術の利用可能性が投資先として考慮する材料となる。
同上のケースで、さらに市場参加すら難しい場合、政府によるFDI要請がインセンティブとなる。このとき売手寡占が可能。供給を安定化するためと、将来的に市場調達が不可能になることを見込んで、組織の経済学の立場から垂直的統合を説明。
効率性追求垂直的FDIについては上の2つと同様。
水平的FDIについては要素賦存量の分布とHecksher-Ohlin-Samuelsonの定理で説明。
政府の減税政策、投資促進政策、貿易規制とか。規模の経済と範囲の経済。
多角化によるリスク分散。

2009/06/23

西口(2003)

西口敏宏(2003)『中小企業ネットワーク―レント分析と国際比較』有斐閣。

本書は中小企業の分析をネットワークの理論と結びつけ、フィールドワークと国際的な地域比較によって研究したものである。比較の指標となるのはネットワークにおける「レント」である。レントには2種類のレントがあり、情報の仕切りを外すことによる情報共有から生まれるバート・レントと、情報の仕切りを作ることによる協調関係から生まれるコールマン・レントである。バート・レントには「評判」と「中央からの公式な調整」があり、前者はネットワークそのものの信用度からネットワークのメンバーの信用度を推定できるとするものであり、後者は権威機関が参入機会を支援してくれるとするものである。コールマン・レントには「社会的埋め込み」と「情報共有と学習」があり、前者は過去の実績から未来への信頼を推測するものであり、後者は文字通り情報共有と学習から知識創造を得るとするものである。

結論から言えば、5つのインプリケーションが得られた。第一に、多様なニーズに対して、既存の組織や(組織化されていない)社会システムは応ずることができず、何らかの特徴を有するネットワークが次々と発生しているということである。第二に、ネットワークが発生することで情報共有や学習・イノベーションが促されるということである。第三に、コミュニティや協同体といった社会構造が存在する地域において様々なネットワークが確認された。すなわち、ネットワークの形成や発展には地域社会にあるノウハウ等が生かされている。第四に、ネットワークが機能するために信頼は必ずしも必要ではなく、逆に信頼関係は構築されていくというものである。ただし、新しいネットワークを底支えするには社会的関係の構築が不可欠であった。すなわち、新しいネットワークにおいて、新しいメンバー同士が小さな成功体験を繰り返すことで、好循環に信頼関係を生む。第五に、ネットワークに参加する自体にレントがあり、それに維持や発展は依存するということである。

Christensen and Bower (1996)

Christensen, C. M. and J. L. Bower (1996) “Customer Power, Strategic Investment, and the Failure of Leading Firms,”Strategic Management Journal.

技術革新を分析する先行研究としては、資源依存の理論と資源配分の理論がある。資源依存の理論によれば、マネジャーは競争環境が要請する革新プログラムに資源配分をしなければならない。資源配分の理論によれば、保守的なマネジャーは技術革新よりも製品需要が確実のプロジェクトを支援する傾向がある。

では、一見適切なマネジメントが行なわれている企業が、それでも技術変化に直面したときに産業におけるリーダーシップを発揮できなくなるというのはどうしてか。そこで、資源依存の理論と資源配分の理論を折衷し、顧客需要が技術革新における資源配分を形づけると分析する。

技術が顧客のニーズを満たすものである限り、既存企業は包括的な産業技術の発展に貢献する。ところが、同じ企業が、既存顧客の需要に基づいて資源配分をしたりするために、新興市場にとって過剰な技術しか伸びない。逆に新興企業は既存企業の手が届かない顧客層をターゲットとし、そこに即した技術進展がやがて主流の技術を驚かすようになる。

2009/06/20

Diamond and Rajan (2001)

Diamond, Douglas W. and Raghuram G. Rajan (2001) "Liquidity risk, liquidity creation and financial fragility:A theory of banking," JPE.

背景
借り手にとっても貸し手にとっても流動性が重要である。借り手は資金集めがいつもうまく行くとは限らないという不確実性に直面している。貸し手は急に資金が必要になったときに貸した金を回収しなければならないという不確実性に直面している。商業銀行はこうした借り手と貸し手の間に立って金融仲介業務をしているのだ。

モデル設定
Diamond and Dybvig (1983)のように確率的にimpatient lenderとpatient lenderが発生する。impatient lenderはliquidateやsellによって現金を調達する。

さらにrelationship lenderは借り手の情報をよく知っている。資産を差し押さえて現金化する際には他の貸し手よりも資産の用途を知っているので高く処分できる。

後はかなりゴリゴリ。
Lecture Note 1, Note 2

含意
銀行の借方では資金不足の借り手に資金供給している。その一方で資金供給するための資金を預金者から集めている。銀行はfragile capital structure (subject to runs)をもつrelationship lenderなのだ。銀行はfragile capital structureを管理する能力を持っており、その能力から手数料(rent)を得ている。このrentはbank-runが生じると無に帰してしまう。

貸し手と借り手の双方に流動性を供給しているのは金融機関のなかで銀行だけである。MMFでは預金者に対するliquidityを保っている反面、運用は流動性のある資産で行なうのであって、illiquid assetsは避ける。生命保険では契約者に支払うタイミングが観察可能であるから云々。IBは将来のキャッシュフローに興味があって、VCはベンチャーのon-goingに興味がある。

預金資金は安全資産に投じて貸出資金は市場から調達するというナローバンク論は、銀行の流動性供給という役割を殺すことになる。全額保護の預金保険もまた銀行の流動性供給を殺す。部分保護の預金保険はうまくいかないこともない。引出規制は預金者が困ってしまう。

Baumol (1986)

Baumol, William R. (1986) "Productivity Growth, Convergence, and Welfare: What the Long-run Data Show," AER.

横軸にGDP per worker
縦軸にAverage Growth Rate
をとって国別にプロットしていく。
理論的には均衡状態に近づくので右下がりの関係が生まれるはずである。
しかし、実際にはGDP per workerが低いほどGrowth Rateにバラツキがあり、マイナス成長さえも存在する。
この形状は三角形となっており、これをボーモルの三角形と呼ぶ。

後にSala-i-Martinが収斂性を定義した。
均衡水準に収斂していくことをbeta-convergenceと呼ぶ。いわば所得と成長率の右下がりの関係である。
また、所得のバラツキが収斂していくことをsigma-convergenceと呼ぶ。

2009/06/19

Mankiw, Romer, and Weil (1992)

Mankiw, N. Gregory, David Romer, and David N. Weil (1992) "A Contribution to the Empirics of Economic Growth," QJE.

モデル設定
物的資本・人的資本・労働量でできるCobb-Douglas型の生産関数を労働量A(t)L(t)で割って

資本蓄積



Level Effects
均衡状態(steady state)で

Y(t)/L(t)=A(t)y(t)に注意して対数をとると、

あとは色々と仮定をおきつつ実際のデータでregressionを走らせる。
修正済み決定係数によれば、均衡所得の水準がばらついていることの80%をこのモデル説明できた。
係数を見る限り、教育投資や設備投資が均衡所得に影響している。

Growth Effects
均衡状態に至るまでの成長率として

平均成長率を左辺に作るように変形して

これはボーモルの三角形に条件をコントロールすると右下がり関係を導けることを示している。
regressionを走らせてln y(0)の係数が負であることを確認すればよい。

Smith (2008)

Smith, Gregor W. (2008) "Japan's Phillips Curve Looks Like Japan," Journal of Money, Credit and Banking.
(参考)
http://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50413864.html

概要
フィリップス曲線は横軸に失業率、縦軸にインフレ率をとってプロットしたものである。日本のフィリップス曲線は経験的に弓状のカーブを描く。日本の国土は弓状のカーブを描く。ゆえに日本のフィリップス曲線は日本の国土と似ている。この先駆的な論文を発端として、経済指標と国土の形状の関係が研究されるようになった。
Marshall islands,Canada, Virginia, Czech Republic, and The Netherlands

the Kyushu-Shikoku Effect
近年、ゼロ金利や量的緩和などの金融緩和政策を講じたにも関わらずインフレ率がきわめて低かった。これを九州四国効果と呼ぶ。

the Okinawa Effect
1990年代、デフレの深刻化が高失業率を生み、フィリップス曲線で到達したことがない端の領域に到達してしまうのではないかと政治家や日銀関係者は心配していた。文脈から推測するに、フィリップス曲線の端に到達することを避ける動きは沖縄効果と関係があるようだ。

Matsuyama (2002)

Matsuyama, Kiminori (2002) "Explaining Diversity: Symmetry-Breaking in Complementarity Games," AER.

対称性の破れ?
モデル設定
横軸と縦軸で各プレイヤーの戦略を表わす。最適反応関数は各プレイヤーで同一としてプロットする。ここでグニャグニャな最適反応関数を書いておこう。
興味があるのは複数均衡の状態である。複数均衡になるように矢印の向きを工夫しよう。

均衡
45度線にある均衡はsymmetricな均衡、それ以外の均衡はasymmetricな均衡である。また、均衡にも安定と不安定があり、均衡点に矢印が集まる点は安定な均衡、均衡点から矢印が出ていく点は不安定な均衡である。

Matsuyamaモデルではパラメータの値によって均衡の出方が変わってくる。とくに45度線に不安定な均衡しかない場合はasymmetricな均衡しか存在しない。こういう場合にはcoordinationの失敗というわけにはいかない。

含意
多様性の存在は当初、パラメータによって外生的に決めていた。それが複数均衡によってコーディネーションの問題とされるようになった。しかし、それならばパレート最適な状態にプッシュすればいいだけであるが、実際にはそうならない。たとえば対称的でないナッシュ均衡が存在するとき、それ以上のパレート改善ができない。このように勝者と敗者が両方存在するのはどうしてか示すことが重要となる。

Woodward (1965)

Woodward, Joan (1965) Industrial Organization: Theory and Practice, Oxford University Press.

最適な組織形態は生産システムによって異なる。Woodwardは生産システムをunit production; mass production; process producitonなどと分類するのだが、技術はこの順で大きくなるので、組織形態にもそれなりに傾向がある。しかし、mass productionは非熟練工を末端に組織するため、他の2つとは違って、ムチ打つような組織形態となっている。つまり、Taylorの方法はこのmass productionを見ているからだというわけである。

Chatman (1991)

Chatman, J. A. (1991) "Matching People and Organization: Selection and Socialization in Public Accounting Firms," Administrative Science Quarterly.

社員と組織の価値観はどうフィットするのか。
(1)入社時に組織と価値観が一致している社員ほど組織への適応が早い。
(2)社員との交流を積極的に行なった社員ほど組織とのフィットが良い。
(3)組織とマッチしている社員ほど職務に満足し、長く勤めるようになる。

Klein et al. (1978)

Klein, Benjamin, Robert G. Craeford and Armen A. Alchian (1978) "Vertical Integration, Appropriable Rents, and the Competitive Contracting Process," Journal of Law and Economics.

Appropriable Quansi Rent(専有可能な準レント)
レントとはいわば既得権益である。準レントとは企業収入からサンクコストを除く生産費用を引いた差。専有可能な準レントとは最適利用者と次善利用者の差。

opportunistic behavior(機会主義的な行動)
ホールドアップやモラルハザードなど契約不履行に至る行為。契約後のこうした機会主義的行動に対抗するにはどうするか。

Contractual Solutions
専有可能な準レントが高いとき垂直統合、準レントが低いとき長期契約が望ましいらしい。専有可能な準レントが高いときは契約不履行を防止することが難しいので長期契約に余計なコストが生じる。いっぽう、垂直統合には準レントとは関係なく統治コストが生じるので、準レントが低いときには長期契約のほうがコストが抑えられる。長期契約は明示的な長期契約と暗黙的な長期契約が存在する。明示的な長期契約とは政府や裁判所などの強制力に頼るものであるが、こうした機会主義的行動の防止には監督コストや訴訟コストがかかる。そこで暗黙的な長期契約が実際にみられるのだが、これは契約不履行を信用の低下と繋がることで市場からの放逐に至る。Coaseがいうような組織と市場の二律背反ではないと強調している。

2009/06/18

Krugman (2008)

Krugman, Paul R. (2008) "Optimal fiscal policy in a liquidity trap," mimeo.
邦訳
http://d.hatena.ne.jp/okemos/20090101/1230777556

モデル設定
・ニューケインジアンな感じで、貨幣保有量と公共財と労働量を代表的個人の効用関数にブチ込む。(FOCで欲しい関係は形を考えつつすべてブチ込んでしまう。)
・一階条件を組み合わせて、New IS曲線、LM曲線、労働供給曲線を導出する。
Obsfeld and Rogoff (1995)
・来期以降を均衡状態とする。
・金利のゼロ制約を流動性の罠とみなす。
Krugman (1998)

政策含意
・金利のゼロ制約のもとでは金融緩和により完全雇用量を実現できない。
・財政政策の効果は完全雇用でカットオフが生じる。とくに流動性の罠の状況では、財政政策で完全雇用まで押し上げることが有効。

青木(2008)

青木昌彦(2008)『私の履歴書 人生越境ゲーム』日本経済新聞出版社。

青木先生は学生運動、マル経、数理経済学、米国留学、比較制度分析と異なるフィールドを渡り歩いた。異なるフィールドでは異なる制度があって、枠組みそれ自体が別物である。この越境ゲームを成功するためには、多様性を納得いく形で落とし込む必要がある。それがたとえば青木(2008)のような比較制度分析であり、労働者と株主のゲームを描写したAoki (1980 ,AER)である。この越境ゲームには挫折を伴うが、知的ベンチャーとしての再出発に繋がっている。これは岩瀬(2006)で紹介されていたPlanned Happenstance理論(Stanford大学教授が提唱したらしい)にきわめて近い。つまり、careerに関してanchorを下ろしていないのである。Jobs (2005)においてもconnecting the dotsと話されているが、人生の点と点は事後的に繋がるものであるから、事前的には点を振っていくべきなのだ。

また、社会的ムーブメントと高度な知的交流を取り込んでいくダイナミックな半生である。驚くべきことに、この越境ゲームにおける要所要所に多数の有名人物が関わってきている。それがメカニズムデザイン論やフィールドワークとの出会いであって、コテコテの数理経済学を相対化する役割を担っているようだ。それに加えて、アメリカ流の人的資本の形成過程には参考になるものがある。推薦書・ジョブマーケット・テニュア審査の裏話もあるし、初等教育・高等教育・研究所をめぐるアメリカの工夫も記述されている。

岩瀬(2006)

岩瀬大輔(2006)『ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて』日経BP社。
http://hbslife.exblog.jp/

MBAの花形産業は衰退するという。コンサルティングや投資銀行から、プライベートエクイティを経て、ヘッジファンドがいま人気とのことだ。本書第5章で詳しいが、本書の本質はそこではない気がするので割愛する。

HBSはtransformational experienceを重視し、case methodというstyleで、経営感覚を養う。何よりもHBSで恵まれているのは優秀な同級生と卒業生だ。各国からリーダーを目指す学生が集まってくるし、リーダーとして成功した卒業生が話を披露しに訪れる。カメルーン人のFabriceは、「誰しも、守るべきprinciple・理念を持っているべきだ。リーダーシップの本質は、行き着くところはintegrity、すなわち人格の誠実さ・高潔さだと思う。integrityを失ってしまったら、どうしようもない。白・黒と判断せずに、グレーだと曖昧な判断をすると、グレーの問題は必ず悪い方向に流れる。今、自分の中で明確な軸を持っていないと、これから20年後にでも、何らかの倫理的な問題の直面したときに、必ず誤った方向に流れてしまう。」「僕にとってprincipleは、胸や背中の筋肉のようなものだ。小さなことで少しでも、自分の信念を曲げてしまったら、どんどんその筋肉は弱くなって行く。逆に、自分の信念を守る事で、自分が少しずつ、少しずつ強くなって行く事が出来る。ある日突然、大きな問題に直面して初めて、自分の価値基準が出来上がるものではない。もっと小さな、些細な問題を自分がどう判断するか、その積み重ねで、自分のprincipleが形成されて行くものだ。だから、目の前のちょっとした問題と思えるような事でも、信念を持って行動しなければならないと思う。」と言う。
principleといえば、昔、白洲次郎の「プリンシプルのない日本」を読んだことを思い出す。敗戦処理のような困難な局面でも筋を曲げるべきでないし、私自身も軸がぶれないために自分のprincipleが何か見極めなければならないと思った。

他にも、Career Anchor理論とPlanned Happenstance理論の話が面白かった。
http://hbslife.exblog.jp/3557754/

2009/06/17

Krugman (1998)

Krugman, Paul R. (1998) "It's Baaack! Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap," Brookings Papers on Economic Activity.

山形浩生訳
http://cruel.org/krugman/krugback.pdf

方法論
・来期以降を均衡状態と仮定する。
・RBCモデルを模倣して代表的個人の効用最大化問題をつくる。(CC曲線)
・貨幣数量説によって貨幣を導入する。(MM曲線)
・金利のゼロ制約を流動性の罠とみなす。

政策含意
インフレ期待を起こすために貨幣供給を無責任に行なう。

(参考)
Krugman, Paul R. (1998) "Japan's Trap," mimeo.
山形浩生訳
http://cruel.org/krugman/japtrapj.html
方法論も政策含意も上と同じ。

2009/06/16

中里(2002)

中里透(2002) 「財政政策の非ケインズ効果をめぐる論点整理」(井堀利宏、加藤竜太、中野英夫、中里透、 土居丈朗、 近藤広紀、 佐藤正一 「財政赤字と経済活動:中長期的視点からの分析」第2章)『経済分析』第163号、2002年3月、71-90ページ。

非ケインズ効果が生じる基本的な理由は次のようになる。政府主体の最適行動は課税平準化によって異時点間の資源配分の歪みを最小化することである。それにも関わらず、現状の税率は過剰に低く抑えられており、税負担が先送りされている、という場合を考える。このとき、 現時点における増税は課税の歪みを改善し、 恒常所得を向上させる。消費者がforward lookingで合理的な最適行動をとるとき、増税によって消費活動をむしろ活性化させることができる。これが非ケインズ効果である。

非ケインズ効果が生じやすい状況は次のようにされている。 まず、家計の流動性制約が小さいような状況である。流動性制約があるとき消費平準化ができず、forward lookingな行動をしないからである。 次に、最適税率が高く、 現状の税率が低いような状況である。すなわち、税負担を先送りしているとき、資源配分の歪みが生じる。また、政府支出の国内総生産比が小さいという状況も挙げられている。これは政府支出の拡大余地が大きいために財政改革が行なわれにくいという意味である。そして、政府債務残高の国内総生産比が大きい状況である。以上の状況で非ケインズ効果が生じやすいとされている。

実証研究が信じられるのかどうかはよくわからん。

2009/06/14

武石(2003)

武石彰(2003)「分業と競争―競争優位のアウトソーシング・マネジメント」有斐閣。

 取引関係を考察するときは取引関係だけ、組織内の動態を考察するときは組織内だけであるのが普通に思われるが、武石は取引関係と組織内を関連させた。すなわち、競争的にアウトソーシングを行なうためには、それなりに内的なマネジメントが重要となってくるのである。武石の実証分析では、三点のインプリケーションが得られている。
 第一に、内的マネジメントの重要性である。理論家にとっても実務家にとっても、アウトソーシングに際して組織の外に問題があると考えがちだが、組織の内部にも眼差しを向けるべきなのである。アウトソーシングを活用している企業は、当たり前の工夫や仕組みを全体のバランスを保ちつつ、着実かつ長期的に営んでいることがわかった。ところが、当たり前のメカニズムは難しいもので、ひとつひとつの企業が取り込むことができないのである。
 第二に、知識のマネジメントの重要性である。企業の境界という問題と知識の境界は一致しないということである。アウトソーシングをしつつも、新しい技術をいかに取り込むかということが課題となり、そのために相互の知識領域が重複するような分業が求められる。米国は流動的な人事から知識が一巡するが、日本の場合でも企業グループ内での人事異動は活発であった。専門分野の外との知識共有がなければイノベーションは生まれないので、企業を越境する知識共有が必要である。
 第三に、アウトソーシングのマネジメントの重要性である。アウトソーシングを競争優位に結びつける既存の理論として、第一にはコア・コンピタンスに集中するということであり、第二には外部の企業との協力関係を気づくということであった。これらの競争優位は必ずしも達成できないが、努力と工夫があれば可能であることがわかった。それに重要なのが内部組織や知識のマネジメントであり、イノベーションに対して主体的に関わるためには長期的で全社的な戦略をとるという立場が必要となるのである。

2009/06/13

Ljungqvist-Sargent 26.7.

Kiyotaki, Nobuhiro and Randall Wright (1993) "A Search-Theoretic Approach to Monetary Economics," AER.

清滝信宏「貨幣と信用の理論」
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/1993/kk12-4-6.pdf

Kiyotaki-Wright modelでは貨幣をsearch and matchingで描写している。

・(0,1)の中で無限に存在する個人は(money,commodity)のどちらかの状態を選べる。
・貨幣供給量MによってM:1-Mの割合で状態が分かれる。
・交換によってcommodityを手に入れた場合、commodityをリフレッシュすることができ、効用Uをゲット。
・(commodity)状態の個人同士では物々交換の費用εが発生。
・(commodity)状態の個人は確率xでしか取引に応じない。
・交換相手を見つける確率はθであり、物々交換も売買も確率は同じ。
・(money)状態の個人は、(commodity)状態の個人がさらにΠしか売買に応じない、と知っている。
・ただし、(commodity)状態の個人はπを選ぶことができる。

このとき(money)状態の評価関数は


(commodity)状態の評価関数は

上記のmax関数が肝となって複数均衡となる。

2009/06/11

Ljungqvist-Sargent 26.3.

そろそろMacroeconomicsの勉強をはじめてみる。26.3.では失業について扱う。

Beveridge Curve(BC)
有効求人倍率のパラメータ
失業者数(求職者数)
求人数
就職者数
退職者数
労働市場が均衡して


Job Creation(JC)
全員解雇
完全雇用
長期均衡において完全雇用が実現されて


Wage Curve(WE)
失業状態
非失業状態
賃金交渉力のパラメータによって

Job Creationでの式を借りつつ整理すると、


Comparative Statics
WEとJCを(θ,w)にプロット、JCとBCを(u,uθ)にプロットする。
yを上げると、wとθとuθが上がって、uが下がる。

Lucas (2004)

(参考)Microfoundationsをめぐるhimaginary日記
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090608/levitt_and_yglesias_on_macro

計量経済学に使えるマクロ経済のデータは少ないので現実を的確に描写するモデルよりも、ミクロ的基礎付けからゴリ押しした数式モデルが評価される、と否定的な論争。

それはまた別の話。

Lucas, Robert E., Jr. (2004) "Keynote Address to the 2003 HOPE Conference: My Keynesian Education"
http://homepage.ntu.edu.tw/~yitingli/file/Workshop/lucas%20.pdf

(...)Now it’s coming in use in macroeconomics with real business cycle theory; certain kinds of monetary variations have been introduced with success. (...) But I don’t teach any IS-LM. I don’t even mention it. (...) In that sense, for me, it’s over.

But I want to come to this persistence of the IS-LM model, because it isn’t over.

2009/06/10

Ghoshal (1987)

Ghoshal, Sumantra (1987) "Global Strategy: An Organizing Framework," Strategic Management Journal.

国際経営戦略のまとめ。

戦略の目的国と国の違いを活かした利益規模の経済による利益範囲の経済による利益
既存の生産体制の効率化労働者や資本財が安いところへの投資
Kogut (1985a)
Itami(1978)
Okimoto, Sugano and Weinstein (1984)
生産規模のさらなる拡大
Hout, Porter and Rudden (1982)
Levitt (1983)
Doz (1978)
Leontiades (1984)
Gluck (1983)
製品・市場・事業を横断する投資や資本の共有
Hamel and Prahald (1985)
Hout, Porter and Rudden (1982)
Porter (1985)
Ohmae (1985)
リスクマネジメント市場リスクや政策リスクへの対応
Kiechel (1981)
Kobrin (1982)
Poynter (1985)
Lessard and Lightstone (1983)
Srinivasulu (1981)
Herring (1983)
経営戦略や生産の調整が可能となる規模の追求
Evans (1982)
Piore and Sabel (1984)
Gold (1982)
Aaker and Mascarenhas (1984)
分散投資
Kogut (1985b)
Lorange, Scott Morton and Ghoshal (1986)
イノベーションの学習と適用組織やマネジメントにおける各国特有のプロセスやシステムからの学習
Westney (1985)
Terpstra (1977)
Ronstadt and Krammer (1982)
経験曲線効果
BCG (1982)
Rapp (1973)
製品・市場・事業を横断する学習の共有
Bartlett and Ghoshal (1985)

2009/06/01

Krugman (1979)

Krugman, Paul R. (1979) "Increasing Returns, Monopolistic Competition, and International Trade," Journal of International Economics.

Closed Economy
Utility Function (Love of variety)

Labor Demand Function

Goods Market

Labor Market

Homogeneity


Equilibrium
Profit Maximizing (PP Curve)

Zero Profit (ZZ Curve)


右上がりなPP Curveと右下がりなZZ Curveを(c,p/w)上にプロットする。x=Lcから生産水準が決定。
財のバラエティは、労働市場の均衡から


Open Economy (Effects of Labor force growth)
貿易の開放はLの増加によってZZ Curveを左シフトさせるので、均衡となるcは減少する。Lの増加とcの減少を財のバラエティの式に入れて、財のバラエティは増加する。PP Curveが右上がりなためにp/wが下がるので、ZZ Curveの式からxは上昇する。

Open Economy (Effects of trade)
効用関数・生産技術・要素賦存量が同一の二国間では輸出入が均衡している。ただし、財のバラエティが増えることによって効用そのものは増加する。

Effects of factor mobility
生産要素の移動性が高いと、貿易障壁があったとしても、開放経済的になる。Mundell (1957)がHecksher-Ohlinについて成り立つことを示しているが、Krugman (1979)においてもこれが言える。

ただし、貿易障壁があるとき、労働者は特定の都市に集積してしまうだろう。それは人口の大きい都市ほど、実質賃金が高く、財のバラエティも大きいからである。というわけで初期の人口分布が変であっても、歴史依存的に人口集積が起きてしまう。