2009/10/26

坂の上の雲 (1)




NHKドラマ化に向けて読んでみる。大まかな流れは単行本で予習してドラマを楽しもうと思う。

主人公は秋山兄弟と正岡子規の三人。いずれも愛媛出身。秋山好古は大阪師範学校を経て、陸軍士官学校へ。プロシア勝利の中、フランスに留学。やがて騎兵を率いてコサック師団を倒すこととなる。秋山真之は共立学校で英語を学んだ後、大学予備門を中退して、海軍兵学校へ。やがて参謀としてロシア海軍を倒す。正岡子規は真之と予備門まで一緒であり、帝国大学文科大学(のちに退学)へ。升(のぼる)さん。吐血の経験から子規と号する。俳句文化に貢献。

共立学校(のちの開成高校)の英語教師が高橋是清。予備門(のちの一高)の同級が夏目漱石、山田美妙、尾崎紅葉、寺石正路、米山保三郎。同じ愛媛出身に高浜虚子。

ワインがあるので日本に来たドイツ軍人メッケルの言葉「戦いは、出鼻で勝たねばならぬ。」は宣戦布告と先制攻撃を同時に行なうものであったが、日本軍はこれを濫用し名物になったという。

好古の「質問の本意をきかずに弁じたてるというのは政治家か学者のくせだ。軍人は違う。軍人は敵を相手の仕事だから、敵についてその本心、気持、こちらに求めようとしていること、などをあきらかにしてから答えるべきことを考える。そういう癖を平素身につけておかねば、いざ戦場にのぞんだときには一般論のとりこになったり、独善におちいったりして負けてしまう。」という言葉は示唆に富む。

真之の「これが過去五年間の試験問題だ。教官というものは癖があって、必要な問題はたいていはくりかえして出す。それにあわせて、平素から教官の顔つきや説明ぶりをよく観察してその特性をみぬいておけ。その二点を合わせ察すればおのずからなにが出るかということがわかる。試験は戦いと同様のものであり、戦いには戦術が要る。戦術は道徳から解放されたものであり、卑怯もなにもない。」という言葉は参考にしておこう。

参考になりそうなサイト
http://www.sakanouenokumo.jp/

14 fourteen

モデルは酒鬼薔薇聖斗であるが、あの事件の報道は酷いものであった。小説では、少年が独自の世界観を有するに至り、その中二病ゆえに現実世界を変えようとしたのであった。この少年が住む世界は我々の世界とは違うのであり、我々ひとりひとりの世界もまた違う。

やりたいことがないヤツは社会起業家になれ

そりゃーやりたいことがなければ、社会貢献したくなると思うさ。マズローの欲求階層を超えた欲求があるとすれば、他者実現欲だろう。しかし、重要なのはビジネスモデルであって、これがなかなかネックである。著者の山本繁だって、バイトとかベンチャー支援でなんとか食い繋いでいる。レベニューを出すには山本繁以上に頑張る必要がある。小学生のときから不況社会の我々が何をできるのだろうか。

2009/10/25

日本人に一番合った英語学習法

斉藤兆史と書いて「よしふみ」と読むのは初めて知ったが、英語の先生である。英語学習法は概して三種類あるようである。第一に、幼少期に英語圏に行ってしまうことである。これは英語がネイティブ並みなるが、日本語が逆に不自由になってしまう。第二と第三はコミュニケーション重視と文法重視である。概して、コミュニケーション重視は文法軽視の裏返しであり、英語を話してきた日本人が素読・暗唱・文法・多読によって学習してきたことに反するという。一方、英語以外に一芸があれば、英語自体はそこまででなくても、コミュニケーションに不自由しない。

2009/10/24

「法と経済」からみた中央銀行

「法と経済」からみた中央銀行
2009年10月21日 白川方明日銀総裁

低金利低インフレからバブルが発生してしばらくすると、バブルの限界がきてサブプライムショックが発生、証券化商品価格が下落したおかげでリーマンショックが発生、信用収縮が一気に起きて資金の貸し手が不在になった。そこで日本銀行は金利を低くして、担保を外国債まで広げて円やドルの資金を潤沢に供給し、CPや社債を買い入れ、ドル市場の安定のためにスワップを実施した。

日本銀行の業務は第一に通貨の安定であり、偽札の防止や物価の安定を頑張っている。中央銀行は信認が不可欠であるため中央銀行自身が努力しなければならない。通貨の安定は、法令や行政命令ではなく取引を通じて行なうものである。中央銀行で働くことは、パブリックな仕事であり、幅広い知識の重要であり、実務が重要であり、組織で仕事をすることが意義深く、変化への柔軟な対応の重要性である。

流動性と決済システム

2008年11月26日の白川方明日銀総裁の講演によれば、流動性に関する論文を欲しているらしい。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0811f.htm

「経済活動の変動を理解するうえで、流動性という概念は極めて重要であり、我々は流動性についてもっと研究を深める必要があるということです。近年、マネタリー・エコノミックスの世界では、ニュー・ケインジアン経済学に基づく論文が非常に増加しています。これらの研究は金融政策の運営に関し我々に様々な洞察を与えてくれましたが、資金流動性や市場流動性など、流動性を明確に意識した分析は、行われてきませんでした。しかし、流動性が突然過剰になったり、逆に突然枯渇するといった現象について十分理解することなしには、マクロ経済を分析することはできなくなってきています。幸い、最近では、流動性に関する研究は限界効用の高い分野であることが強く意識されるようになってきており、流動性に関する研究成果も多くみられるようになりました。」とのことである。

マネーサーチを勉強する研究者の方々には政策インプリケーションへの貢献を強く願うのである。

2009/10/23

Palacios-Huerta (2001)

Ignacio Palacios-Huerta, 2003. "Professionals Play Minimax," Review of Economic Studies, Blackwell Publishing, vol. 70(2), pages 395-415, 04.

ペナルティキックでキッカーとゴールキーパーが左右の意思決定を行なうゲームを考える。そのとき勝率をペイオフとしたときの混合戦略ナッシュ均衡を解いてやると、実際の意思決定の割合とほぼ等しかった。したがって、サッカー選手はミニマックス戦略をとっているのだ、というような論文。いまいちこの論文の凄さがわからなかった。

2009/10/13

大野(1978)

大野耐一(1978)『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』ダイヤモンド社。

古きよきトヨタが生産性向上を達成したのがよくわかる。かつてアメ車の向上の生産性は日本の9倍だったらしい。そこでトヨタは人間の能力をフル回転させることにした。待ち時間とか不良製品とか在庫管理とか労使ともに不幸な要素を徹底的に吐き出すのがトヨタ式である。小生が着目するのは、熟練労働をマニュアル化することで、非熟練工にも多能工として働けるようになることである。待ち時間も不良製品も在庫管理もゼロにしてしまえばそれ以上の改善は見込めない。ただ、労働生産性は上げ続けることができるはずである。そのためには生産財の発展のみならず、工員のノウハウ蓄積が不可欠と思われる。マニュアルを作ることによって、ノウハウ伝達のコストが大幅に下がったのではないかと推測している。これによって、過去の先端が現在で常識になるのである。

2009/10/10

Remember the Titans (2000)

飛行機に乗っている間に映画を見ていたのだが、高校で見せられた映画があったので選んでしまった。

昭和の頃のアメリカ、白人高校と黒人高校が統合されるとともに、フットボールチームも統合することになった。予想される通り、人種間の価値観の違いを乗り越えて州大会優勝といったところである。チームスポーツということもあるが、ユナイトしていない組織というのは力を発揮しない。金卵みたいに、アメフトは「うりゃー」と言っていればなんとかなるもんだと思ってた。

Roubini and Setser (2005)

Nouriel Roubini and Brad Setser (2005) "Will the Bretton Woods 2 Regime Unravel Soon? The Risk of a Hard Landing in 2005-2006," mimeo.

2000年代前半のアメリカは経常赤字を大量に拡大していった。それにもかかわらず、ドル安によって調整されず、アメリカの大きな経常赤字と他国の経常黒字という国際収支の不均衡が大きくなっていった。これには日本や中国による為替介入も大きく関連しており、米国債の大量購入によりドルは買い支えられていた。これによって世界の通貨は固定相場的となったため、新しいブレトンウッズ体制とみなされた。これを新ブレトンウッズ体制あるいはBW2という。この新ブレトンウッズ体制では、国際収支の不均衡という不自然な状態が維持されており、ソフトランディングあるいはハードランディングが不可避と言わざるを得なかった。

2009/10/09

Okuribito (2008)

死生観が漂う味わい深い作品である。主人公は色々あって田舎で死化粧を職業とすることになった。で、納棺師は死と接しており、死を人生におけるゲートと認識するだが、被差別な職業だとは思いもしなかった。妻の広末が主人公の本木に対して、明らかなる嫌悪感を丸出しにしていた。映画が描写している世界と自分との認識のズレを感じた。

最初に世界の時間軸があって、そこに偶然ひとりひとりの生の線分が存在している認識が自分にはある。実際の世の中が、死を穢れた存在として扱っているのか、あるいは悲劇の瞬間として扱っているのかよくわからない。経済学には自殺の経済学があるらしいが、どうやらその実証研究を行なっていた女性がいるようである。死生観の哲学的考察についてはショウペンハウエルが行なっていたような気がするものの、古典の邦訳は目が痛くなるので読むのはまっぴらごめんである。

Ghosts of Girlfriends Past (2009)

いわば○○○ンの物語であるが、その師匠である叔父さんがあり難い教えを遺している。ターゲットは直接見ずに、鏡を使う。ターゲットに目を付けたら、直接話さずに取り巻きに話しかけてみる。向こうからホイホイついてきたら、首から上を二回褒めてみる。んで、思い切りけなす。そしたら、お手の物らしい。

Yeaple (2005)

Stephen Ross Yeaple (2005) "A simple model of firm heterogeneity, international trade, and wages," JIE.

授業で聞いた話だと、Melitzモデルの拡張だった気がする。ホモ財とヘテロ財に分けて、ヘテロ財をさらに高スキル財と低スキル財に分ける。技術競争のために高スキル財のみ輸出可で、ホモ財は低スキル財産業でも吸収できない低スキル労働者の雇用を吸収する。つまり、スキルの差は企業そのものというよりは労働者のほうにあって、高スキル労働者が集まって高スキル財産業を形成し、低スキル労働者が集まってホモ財産業を形成し、それ以外が低スキル財産業を形成したと考えてよいだろう。そして、企業の生産性は労働者のスキルの関数となっている。この論文では、貿易を通じて高スキル財産業の賃金が上昇するとともに、低スキル産業の賃金が低下することを示し、さらに貿易を通じて生産性が成長すると結論したようである。

まとめスライドも発見した。

2009/10/06

Blanchard and Weil (2001)

Blanchard, Olivier and Philippe Weil (2001) "Dynamic Eciency, the Riskless Rate, and Debt Ponzi Games under Uncertainty," Advances in Macroeconomics.

基礎的財政収支が均衡しているとしても、債務残高の国内総生産比の推移を簡単には一意に予想できないということである。経済成長率が利子率より高くても比率が危険水準に達することもありうるし、利子率が経済成長率より低くても比率が限りなくゼロに近づくこともありうる。
成長率がランダムだから、債務残高の国内総生産比はグニャグニャに動く。が、分布によってはバイアスがかかった状態で動く。