1. 途上国においては、Impact Multiplierはマイナスである(つまり、政府支出が増加したその四半期にはGDPは減少してしまう)。具体的にはImpact Multiplierは-0.21、Long-run Cumulative Multiplierは0.18である。先進国においては、Impact Multiplierは0.37、つまり正であるがとても小さく、Long-run Cumulative Multiplierは0.80である。
2. 変動相場制(Flexible exchange rate)を採用する国と、固定相場制(Fixed exchange rate)を採用する国で別々にFiscal Multiplierを推定した場合、変動相場制を採用する国のMultiplierは基本的にゼロである。固定相場制の国では、Impact Multiplierは小さい(0.09)もののLong-run Cumulative Multiplierは1を超える(1.5)。この結果は単純なマンデル・フレミングモデルと整合的である。
3. 経済の開放度(Openness to Trade)もMultiplierの大きさに影響を与える。開放度が高い国のMultiplierは短期的(Impact Multiplier = -0.28)にも長期的にも(-0.7)マイナスである一方、開放度が低い国のMultiplierは短期的にはゼロだが長期的には1を超える(1.29)。
4. 政府債務の多い(例えば政府債務の対GDP比60%を超える国と超えない国を比べている)国のMultiplierは短期的にはゼロ、長期的にはマイナス(-2.3)である。債務が大きい国ほど、政府支出が増加した場合に、将来の財政引き締めによる債務の削減が強く意識されるので、いわゆるRicardian Equivalenceが成り立つ状態に近くなる、というストーリーが考えられる。
5. これらの結果は政府支出の中でも消費(Government Consumption)に着目しているが、政府の投資(Government Investment)に関するMultiplierもGovernment Consumpitonに関するMultiplierと大まかに言って同じような特徴を示している。
2010/11/03
Ilzetzki, Mendoza, and Vegh (2010)
http://unrepresentativeagent.blogspot.com/2010/11/more-on-fiscal-multiplier.html
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