2009/04/12

ノーリア・バークリー(2002)

ニティン・ノーリア、ジェームス・D・バークリー(2002)「責任のあるマネジャーに何が起きたのか」『リーダーシップ 』ダイヤモンド社。

プラグマティック・マネジメントとは、理論的なマネジメント論をいかに実践するかという話。
(1)事情を考慮する
(2)デッドラインまでに間に合わせる
(3)結果をこだわる
(4)不確実性を恐れない

マネジメントのアイデアは次のようでなければならない。
-注意深い熟慮の後にのみ採用されること
-不要なキャッチフレーズや決まり文句が排除されていること
-実際の結果で判断されること
-いま、この場に密接に結びついていること
-真の問題に根ざしていること
-特定の人や状況に合わせて作り変えられていること
-変化している、また先の見えない状況に適合可能であること
-積極的な実験を通して試験され、磨き上げられていること
-役に立たなくなったときには、廃棄されること

個人的には、特に最後の廃棄が重要だと思う。

ハイフェッツ・ローリー(2002)

ロナルド・A・ハイフェッツ、ドナルド・L・ローリー(2002)「リーダーシップの新しい使命」『リーダーシップ 』ダイヤモンド社。

競争力と挑戦に対するプレッシャーの両立にあたって、リーダーが注意しなければならないのは次の3点である。
(1)人々がセルフ・マネジメントできる環境を作り出さなければならない。
(2)方向性を示し、新しい役割と責任を与え、衝突をうまく調整し、規範を形成しなければならない。
(3)リーダーとしての存在感を保つとともに、その苦痛に対して平然と振舞わなければならない。

ヤン・カールソンによれば、リーダーシップの重要な役割のひとつは「メンバー同士が耳を傾けあい、相互に学習しあうようにすること」だという。互いに利用しあって問題解決を導く組織文化を定着させるのである。さらにカールソンは「各々のメンバーが問題を発見することだ。もし問題を認識し、自分自身でそれを解決しようとしなければ、成功はおぼつかない。」と語っている。トップがビジョンを掲げ、それで組織が統一されるというリーダーシップは破綻してきている。ここにボトムアップのリーダーシップが求められる。試行錯誤しながら戦略を立案、実行していくようにしなければならない。カールソンは「リーダーが果たすべき最も重要な役割は、人に自信を教え込むことだ。人はあえて危険を冒し、その責任を負わなくてはいけない。リーダーは、彼らが失敗したときにサポートし、バックアップしてあげなくてはならない。」と述べている。

ティール(2002)

トーマス・ティール(2002)「マネジメントの人間的側面」『リーダーシップ 』ダイヤモンド社。

優れたマネージャー像は、(1)非常に優秀な超人と(2)マネジメントに必要とされている能力が欠けているにも関わらず尊敬に値する素晴らしいマネージャーに分類される。前者は珍種なので、後者に注目する。後者のようなマネージャーがなかなか存在しないのはテクニックに走りすぎて人格面がネグられるからだ。人格面については、どのように学んでいくべきだろうか。

素晴らしいマネージャーは、イマジネーションとインテグリティに富む。要するに、先見性と社会的責任感というわけである。それでいて、人をワクワクさせてやる気を促す能力、周りの人々に自分たちの味方だと思わせるカリスマ的ヒーロー性がある。

アインシュタインと世界一美しい方程式

素晴らしい。天才は、常識にとらわれない。直感を信じる。好きなこと以外は捨てきる。点と点を結びつける。正しさを確かめる。

2009/04/10

コーポレーション

第4回VCASI公開フォーラム 『コーポレーション』の動画が用意できたようだ。
(1)認知科学の成果を取り入れたコーポレーション概念の理論的検討
(2)日本・西欧・イスラーム・中国における社団組織の比較分析
(3) (1)(2)を踏まえたコーポレート・ガバナンスや雇用問題の検討

植田一博准教授の「消費者による価値転換」の話は示唆に富む。最初に事務上のトラブルがあったときに「dual-taskは難しいということが認知科学では知られている」と冗談を挟むが、主題はDemand-side Innovationという概念について。つまり、製品を世の中に出したとき、想定外の使用が生まれることがあり、それによって新しい分野が開拓されるということである。たとえばNTTの携帯電話は軽量化や小型化を追求するコンセプトを最初は持っていた。ところが、博報堂の調査によれば昔は数字しか送信できなかったポケベルがチーマーによって使われ、4649などと語呂合わせで使われていた。そこから文字通信に発展したのがJフォンのショートメールである。あるいは、ホンダが欧州市場に参入するときに、車を家族での買い物に使うライフスタイルを見つけ、車内空間を広くするというコンセプトの「フィット」が生まれた。

そこで、イノベーター理論の各世代とイノベーションの関係を調べた。博報堂の社員などは革新的に飛びつくのでinnovatorに分類されるが、上記の意味でのDemand-side Innovationは起こしていない。むしろ、early adopterやearly majorityから想定外の商品使用が生まれている。どうしてinnovatorからアイデアが出てこないのか。普及がされているほど情報が加工されているという点で、(1)加工されていない情報を得るから(2)得る情報が多すぎるから(3)立場が専門的すぎるからという3点で分析した。どうやら3番目の要素が重要のように思われた。マイケル・ポーターのcompetitionの時代からco-creationの時代である云々。

三品(2004)

三品和広(2004)『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』東洋経済新報社。第一章から第三章までのコピーをもらったので、第二章まで読んでみる。第三章はコマツとキャタピラーのケース。

戦略は「目先の損得にとらわれることなく考え抜いた意思決定」でなければならず、長期収益の最大化に直接関与する営為を指す。経営戦略の歴史は浅く、Ansoff (1965)やChandler (1962)に始まるにすぎない。アプローチとしては帰納法と演繹法が考えられる。

帰納法として、Peters and Waterman (1982)が優良企業43社を6つ業績指標と革新性に関する評判で抽出し、顧客密着の姿勢や本業への傾斜など8項目の特徴をエクセレント・カンパニーの条件とした。しかし、Collins and Porras (1994)で大半が入れ替わるのみならず、優良企業が凋落する例すらあり、帰納法による戦略論の構築は何らかの過ちを含んでいる。

演繹法としてはマイケル・ポーターと伊丹敬之が日米の代表である。企業収益の最大要因を、前者は産業構造に求め、後者は見えざる資産の蓄積に見出した。しかし、演繹的であるはずのミクロ経済学では静学的に「儲けすぎ」が死荷重となる意味で経営学と対立点があるので整合性が悪い。動学化することで両者は整合性を保てるはず。また、演繹法の欠点としてはそれが必ずしも「身につく」とは限らない点が挙げられる。
HBSではケース・メソッドを教育の中核とする。経営や戦略を学びたければ、擬似的な体験学習こそが王道だからである。

Milgrom and Roberts (1992)の概念を借りれば、日本企業は「人を動かすうえで何が利己心に取って代わるのか」というモチベーション問題、「利害の一致しない構成員をいかに動機づけ、共通目標に導くのか」というコーディネーション問題を二重に抱えている。三品(1997)のように、日本型企業モデルとアメリカ型企業は比較研究として格好の材料であり、それはそれぞれの企業形態が極大的だからである。日本が二重の課題を抱えるのと同様に、アメリカ企業は絶対的な最高経営者を以下に統制するかというガバナンスの問題が強い。日本企業の売上高営業利益率の推移を見ると、非製造業は低いなりにも堅実に推移(3~4%程度)してきたのに対し、製造業は1960年代の10%前後から1990年代の4%まで下がり続けた。この傾向は円ドルレートの推移とほぼ合致する。円高傾向とグローバルの波に追いつけなかったのである。

2009/04/09

King (2002)

King, Ian (2002) "A Simple Introduction to Dynamic Programming in Macroeconomic Models," mimeo.

予算制約下の効用最大化問題、すなわち、異時点間の制約式が与えられたときの最大化問題を解く。
Step 1:生涯効用関数を期間ごとの効用関数に分解する。
U(x0,x1,..;u0,u1,...)=u0(x0)+u1(x1)+...
制約式はもともと期間ごとに別れている。
Step 2:予算制約式をスカラーごとに分ける。
xがベクトルのときは制約式を要素ごとに分解する。
Step 3:ラグランジアンを定義する。
とくにStep 2の作業によって、ラグランジュ乗数をスカラー(要素の数×期間だけ存在)として扱うことができる。
Step4:解くだけ。
control variableで一階条件を導出して、出てきたラグランジュ乗数をキャンセルする。

ラグランジアンを定義すれば済むだけに見える。ベルマン方程式の意味がわからない。能力不足か。
Case1:有限期間
Backward Inductionで考える。一番最後から初期変数を既知とするときの最大化問題を考える。既知とした初期変数をその前の期の最大化問題で表現する。この繰り返し。
Case2:無限期間
再帰的な関数を定義してCase 1と同じように任意の初期条件を与えても生涯効用関数の最大値を返すような関数を価値関数として定義する。たとえば、

が予算制約付きで与えられたとき、効用関数の総和を価値関数とすれば、割引を考慮した価値関数の差は期間効用関数なので


解き方は3通り。
Method 1:Brute Force Iterations
有限期間のBackward Inductionと同じように、無限期間後のW=0の状態を考えて、右辺の最大化問題を考える。右辺の最大化問題を解いて左辺のWが導出される。これを繰り返して、Wの収束値を求める。
Method 2:Guess and Verify
右辺のWの形を予想する。予想したWを右辺に代入して最大化問題を解く。それによって左辺のWが明らかになるが、最初の予想と合致しているか判断する。
Method 3:Using the Benveniste-Schienkman Formula
これを使うらしい。