Murphy, Kevin M and Shleifer, Andrei and Vishny, Robert W, 1992. "The Transition to a Market Economy: Pitfalls of Partial Reform," The Quarterly Journal of Economics, MIT Press, vol. 107(3), pages 889-906, August.
ECONOCLASMからQuote.
以下のようなpartial reformの状況を考える。念頭にあるのはロシア。原材料生産が政府の計画によって決められている(自由化した場合より過小な生産量)。国営企業は政府によって決められた価格でこの原材料を買わねばならない。ここで、経済改革によって、この原材料を投入財とする製造業に民間参入が認められるとする。民間企業は原材料購入価格を自由に決められる。すると、民間企業は、国営企業が払う価格よりも少しだけ高い価格で原材料を購入し、原材料のほとんどが民間企業に配分され、国営企業は原材料不足に直面する。
しかも、民間が参入する製造業は、原材料需要の価格弾力性が高い業種。なぜなら、価格弾力性が高いということは、固定資本が必要ではなく、複数の投入財を同時に使わなくてもいいということであり、参入しやすい業種であるから。したがって、経済改革による社会厚生の損失は、非常に大きい。(需要の価格弾力性の高いセクターで取引量が増え、低いセクターで取引量が減るから)
しかし、もし経済改革後も、原材料需要の価格弾力性が低い業種への原材料供給を政府の計画通りに行えば、社会厚生水準は低くならず、弾力性の高い業種に参入した民間企業が原材料を買って市場が拡大する分だけ、厚生は上がる。これが、中国と旧ソ連の違いだ、というのがShleiferたちの主張。
Unquote. この三人組は複数均衡のビッグプッシュ論文だけだと思っていた。この論文の社会主義から自由主義への移行に際して方法を間違えると国富が落ちることを示しているという点、日本の構造改革も方法次第では国富が落ち込むということが考えられる。たとえば、既得権益を破壊しても成長産業を作らなければリソースが余ってしまう。
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