2009/08/06

Caballero and Hammour (2005)

経済論戦は甦るより。

The Cost of Recessions Revisited: A Reverse-Liquidationist View
Ricardo J. Caballero and Mohamad L. Hammour
The Review of Economic Studies, Vol. 72, No. 2 (Apr., 2005), pp. 313-341.

1972年から1993年までのアメリカ製造業における雇用破壊と雇用創造のデータ分析をする。雇用破壊とは既存企業による解雇者数を指し、雇用創造とは新規参入企業により創出された雇用者数を指す。これらのインパルス反応関数を計算するということらしい。

その結果、不況時においては雇用破壊は大幅に増加する一方、雇用創造は減少する。不況終了後、時間が経過するとともに、雇用破壊の水準は最初の状態より低水準となり、雇用創造は最初の状態に向かって回復するという。結果的に、不況は結果的に既存企業よりも新規産業のほうを殺すということになる。これの理論付けとして、労働市場と資本市場にホールド・アップ問題によるレントの発生を導入することで説明できるらしい。

不況発生時の雇用破壊の急増としては二つの説明がなされる。第一に、設備の老朽化(ろうきゅうか)によって既存企業が退出するケースである。第二に、不況の影響で被った損失をカバーするだけの外部資金を得られなくなった既存企業が退出するケースである。前者のケースがシュンペータ的な破壊、後者のケースが無益な破壊と命名される。

不況発生時の雇用創造の落ち込みとしては、次のような説明がなされている。不況により企業収益が減少するので、新規参入も減少する。どの企業家が不況でも参入できて、どの企業家が参入できないのかという選別は、各企業家の技術ではなく純資産で判断される。そのため、不況によって生産性の低下が生じる。

つまり、不況発生時には無益な破壊が発生するとともに、シュンペータ的破壊が発生するものの、その後シュンペータ的破壊は逆に減少する。また、不況発生により企業家の純資産が低下し、新規参入のハードルが高くなるが、不況からの回復期には破壊に急激なブレーキがかかるので、創造の増加にも歯止めがかかる。ということらしい。

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