2009/08/18

Iversen and Wren (1998)

Iversen, Torben and Anne Wren (1998) "Equality, Employment, and Budgetary Restraint: The Trilemma of the Service Economy," World Politics, July 1998.

1960年代まで製造業が雇用の中心だった。経済成長によって、必需財から工業製品へと需要が移り変わり、エンゲルの法則が働いた。さらに、生産性の向上から相対価格が下がり、マテリアル財(テレビ、家、車、家電など)の潜在的ニーズが満たされるに至った。製造業が経済成長を牽引し、雇用を吸収するとともに、実質賃金を引き上げたと言って良い。

1970年代後半以来の20年間で経済構造は大きく変化した。国際化によって政府の役割が限定的になるとともに、新興国が低賃金労働力を供給するようになった。賃金格差と失業の発生は公共部門の拡大によって緩和できるかもしれないが、財政規律との両立は難しい。

工業製品自体も市場全体に行き渡り、量より質が求められるようになった。工業製品の需要が伸び悩む代わりに、サービス財へと需要がシフトした。そして、サービス部門が成長の源泉となるに至っている。ところが、サービス部門自体は生産性の向上の余地がなく、雇用が拡大しているところは低賃金となる。公共部門で高賃金の雇用を確保することは可能だが、財政への負担となる。以上がサービス経済のトリレンマとなる。

エスピンアンデルセンの福祉国家レジームによってトリレンマにおける位置づけを分類できる。自由主義国家においては財政規律と雇用を重視する。保守主義国家においては財政規律と平等賃金を重視する。社会民主主義国家においては雇用と平等賃金を重視する。

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