2009/07/13

Dyer and Singh (1998)

Dyer, Jeffrey H. and Harbir Singh (1998) "The Relational View: Cooperative Strategy and Sources of Inter-Organizational Competitive Advantage," Academy of Management Review.

企業の経営資源として企業間ネットワークを考える。

(1)関係特殊資産
提携関係者の投資が関係特殊資産であればあるほど協力関係による既得権益(レント)の余地が大きいとされる。
・機会主義的行動を防ぐような距離を開けた関係であるほど関係特殊資産を通じたレントの余地が大きくなる。
・提携関係者との取引量が大きいほど、関係特殊資産を通じたレントの余地が大きくなる。

(2)知識共有の慣行
提携関係者の投資が企業間の知識共有慣行にあるほど、レントの余地が大きくなる。
・パートナー特殊的な吸収能力が大きいほど、知識共有によるレントの余地が発生する。
・透明性や互恵関係を推奨し、ただ乗りをやめさせるようなインセンティブがある提携関係であるほど、知識共有によるレントの余地が発生する。

(3)補完的な資源・能力
経営統合したときに資源の価値が高くなり、貴重になり、模倣するのが難しくなるようなシナジーセンシティブな資源を提携関係者が持っている割合が大きいほど、レントの発生余地が大きくなる。
・補完的な資源を統合したときによって企業がレントを得られるならば、それまでの提携経験、内部の探索能力や評価能力への投資、社会ネットワーク・経済ネットワークにおける情報豊富な立場を増大させることができる。
・提携関係者の組織システム・過程・文化(または組織的補完性)における適合度が高いほど、補完的な戦略資源によるレントを提携関係者が作り出せるようになる。


(4)効率的な企業統治
(取引コストを抑えつつ価値を最大化させるような)差別的な方法による統治構造で取引を提携する能力が取引相手にあるほど、レントの余地が大きくなる。
・第三者によるセーフガードよりも自己規律的なセーフガードを採用する能力が提携関係者にあるほど、低い契約コスト・低いモニタリングコスト・低い適合コスト・低い再契約コスト・価値創造の主導権への高いインセンティブを持つことによるレントの余地が大きくなる。
・金銭的な抵当権などの公式な自己規律的セーフガードではなくて、非公式の自己規律的セーフガードを採用する能力が提携関係者にあるほど、低い限界費用・模倣の難しさによるレントを得ることできる。


(5)提携関係によって得られるレントが保たれ続ける理由
・競争企業が因果関係が曖昧なために利益の源泉を特定できない。
・利益の源泉がわかっていても、時間制約のために即座に用意できないという状況である。
・経済学的に存続可能な追加投資ができるような事前の投資をしたこなかったために、相互関連的な資源の不足により実例や投資を真似ることができない。
・必須の補完的戦略資源・関係能力があるパートナーを見つけることができない。
・他の企業と共進化しているなどによって潜在的なパートナーの能力が不可分となっており、潜在的なパートナーの能力にアクセスすることができない。
・機会主義をコントロールし、協力的行動を推奨するような、法的コントロールなどの必須の公式ルールや社会的コントロールなどの非公式ルールを持つ独特かつ社会的で複雑な制度的環境を用意することできない。

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