2009/07/01

Tripsas (1997)

Tripsas, M(1997) "Unraveling the Process of Creative Destruction: Complementary Assets and Incumbent Survival in the Typesetter Industry.", Strategic Management Journal,18,119-142.

急進的な技術変化が既存企業を脱落させて新規企業の台頭を導くこともあれば、既存企業が延命して反映を続けることもある。Schumpeterの創造的破壊には二つの理由付けがなされている。前期のSchumpeterは流動性の高い産業において、参入企業が技術的に優位な製品を開発し、同じ製品を繰り返し売っていた既存企業にとって変わると考えていた。後期のSchumpeterは、既存企業が新規産業にはない何らかの優位性を持っていると考えた。

本論文ではこの二つの理由付けに焦点を当てて、既存企業と参入企業の(1)新技術開発への投資、(2)技術能力、(3)補完的な特殊資産から得られる技術革新の恩恵の専有能力を調べた。そして、創造的破壊と補完的な資産の相互作用およびパフォーマンスへの影響を考察する。分析のためのデータとして植字機産業の1886年から1990年の約100年にわたる競争の歴史を用いる。

植字機産業においては、3回の創造的破壊が起こり、そのうち2回は既存企業が生き残るに至った。そこでは補完的な特殊資産が重要な役割を果たしていた。競争的な創造的破壊による影響が既存企業に与える影響を和らげるからである。そして、新技術開発への投資という観点、あるいは技術能力という観点だけから分析をすると、誤った結果を導きかねない。技術変化の競争的含意を調べるときに、複数の観点から考察することの重要性を本論文では強調している。

0 件のコメント:

コメントを投稿