武石彰(2003)「分業と競争―競争優位のアウトソーシング・マネジメント」有斐閣。
取引関係を考察するときは取引関係だけ、組織内の動態を考察するときは組織内だけであるのが普通に思われるが、武石は取引関係と組織内を関連させた。すなわち、競争的にアウトソーシングを行なうためには、それなりに内的なマネジメントが重要となってくるのである。武石の実証分析では、三点のインプリケーションが得られている。
第一に、内的マネジメントの重要性である。理論家にとっても実務家にとっても、アウトソーシングに際して組織の外に問題があると考えがちだが、組織の内部にも眼差しを向けるべきなのである。アウトソーシングを活用している企業は、当たり前の工夫や仕組みを全体のバランスを保ちつつ、着実かつ長期的に営んでいることがわかった。ところが、当たり前のメカニズムは難しいもので、ひとつひとつの企業が取り込むことができないのである。
第二に、知識のマネジメントの重要性である。企業の境界という問題と知識の境界は一致しないということである。アウトソーシングをしつつも、新しい技術をいかに取り込むかということが課題となり、そのために相互の知識領域が重複するような分業が求められる。米国は流動的な人事から知識が一巡するが、日本の場合でも企業グループ内での人事異動は活発であった。専門分野の外との知識共有がなければイノベーションは生まれないので、企業を越境する知識共有が必要である。
第三に、アウトソーシングのマネジメントの重要性である。アウトソーシングを競争優位に結びつける既存の理論として、第一にはコア・コンピタンスに集中するということであり、第二には外部の企業との協力関係を気づくということであった。これらの競争優位は必ずしも達成できないが、努力と工夫があれば可能であることがわかった。それに重要なのが内部組織や知識のマネジメントであり、イノベーションに対して主体的に関わるためには長期的で全社的な戦略をとるという立場が必要となるのである。
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