2009/06/23

西口(2003)

西口敏宏(2003)『中小企業ネットワーク―レント分析と国際比較』有斐閣。

本書は中小企業の分析をネットワークの理論と結びつけ、フィールドワークと国際的な地域比較によって研究したものである。比較の指標となるのはネットワークにおける「レント」である。レントには2種類のレントがあり、情報の仕切りを外すことによる情報共有から生まれるバート・レントと、情報の仕切りを作ることによる協調関係から生まれるコールマン・レントである。バート・レントには「評判」と「中央からの公式な調整」があり、前者はネットワークそのものの信用度からネットワークのメンバーの信用度を推定できるとするものであり、後者は権威機関が参入機会を支援してくれるとするものである。コールマン・レントには「社会的埋め込み」と「情報共有と学習」があり、前者は過去の実績から未来への信頼を推測するものであり、後者は文字通り情報共有と学習から知識創造を得るとするものである。

結論から言えば、5つのインプリケーションが得られた。第一に、多様なニーズに対して、既存の組織や(組織化されていない)社会システムは応ずることができず、何らかの特徴を有するネットワークが次々と発生しているということである。第二に、ネットワークが発生することで情報共有や学習・イノベーションが促されるということである。第三に、コミュニティや協同体といった社会構造が存在する地域において様々なネットワークが確認された。すなわち、ネットワークの形成や発展には地域社会にあるノウハウ等が生かされている。第四に、ネットワークが機能するために信頼は必ずしも必要ではなく、逆に信頼関係は構築されていくというものである。ただし、新しいネットワークを底支えするには社会的関係の構築が不可欠であった。すなわち、新しいネットワークにおいて、新しいメンバー同士が小さな成功体験を繰り返すことで、好循環に信頼関係を生む。第五に、ネットワークに参加する自体にレントがあり、それに維持や発展は依存するということである。

0 件のコメント:

コメントを投稿