Zollo, Maurizio and Sidney G. Winter (2002) "Deliberate Learning and the Evolution of Dynamic Capabilities," Organization Science, Vol. 13, No. 3, May–June 2002, pp. 339–351.
Dynamic Capabilityとは、業務ルーチンの改善をするような学習可能で堅固な行動指針である。この変化する能力は、知識の改廃を通じた経験蓄積の共進化から発生すると考える。本論文では、このような業務ルーチンの改善はどのようなメカニズムなのか分析している。分析に際して、業務ルーチンの改善を3層に分けている。上の層から下の層に影響が及ぶ。
第1層:学習メカニズム(経験の蓄積、知識の発信、知識のコード化)
第2層:変化する能力(プロセスのR&D、構造改革・再設計、人事の調整)
第3層:業務ルーチンの進化
第1層における学習メカニズムは以下のようになっている。
Step 0:サイクルの外にある知識の蓄積とフィードバック→Step 1へ
Step 1:知識の取り込みや組み換えによる生成的変化。→Step 2へ
Step 2:評価づけや権威づけによる内部淘汰。→Step 3へ
Step 3:問題解決に必要な先鋭された情報の流布。→Step 4へ
Step 4:ルール化や習慣化による情報の定着。→Step 1へ
さて、本論文では学習メカニズムを学習への投資という観点でとらえなおす。学習メカニズムに対しては環境条件や組織特性のほかに職務特性が挙げられる。職務特性からDynamic Capabilityへの影響としては3つの仮説が提示される。
1.経験頻度が低いほど改善度が高い。
経験頻度が高いほど学習メカニズムへの悪影響が与えられるはずである。第一に、個々人の記憶への影響である。頻度が高いほどコツをつかんでくる。個々人は過去の経験を生かすからである。ただ、そのコツは職務特有のものとして限定されてしまう。第二に、コーディネーションへの影響である。経験頻度が高いほど交流に割く時間が減らざるをえない。交流による知識共有ができなくなる。第三に、機会費用である。仕事の回転が早い場合、情報の発信や共有をしているよりも、いつも通り仕事に取り組んだほうが効率がよい。
2.職務経験の異質性が高いほど改善度が高い。
個々人は過去の経験を生かそうとするので、異質の職務を担っているならば、異質の職務の経験さえ生かそうとするはずである。異質の職務経験は効率性の低下を招くとする先行研究もあるが、筆者の意見としてはその逆である。
3.職務内容と成果の間の因果関係が曖昧なほど改善度が高い。
意思決定や行動とその結果の間における因果関係の明確性やサブタスクからの刺激性が学習メカニズムに何らかの影響を与える可能性がある。
以上から、知識のコード化は、職務の回転頻度や同質性を減ずることによる専門家の意見の蓄積によって、より優れたメカニズムに変貌する。うまくいく知識のコード化マニュアルは4原則にまとめられる。
1.コード化はノウハウとノウホワイの発展や伝達を主眼とすべきである。
2.学習サイクルの適切な時にコード化は発揮されるべきである。
3.コード化された知識は激しく同意されなければならない。
4.コード化がうまくいくような構造もまた必要である。
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