2009/04/30

平等ゲーム

桂望実「平等ゲーム」幻冬舎。

かつて3組の夫婦が穏やかな気候の瀬戸内海にある穏やかな島にたどり着き、平等を実現する島を創設した。鷹の島では日本の「リベラル」たちが望むような理想像が制度化されていた。職業は一定期間ごとに無作為に割り振られ、島の決め事はすべて住民投票で決定された。

生まれたときから鷹の島に住む主人公は、鷹の島の新規住人を選別する勧誘係の任務に就いた。そこでは本土の人間が鷹の島の雰囲気に合うか判断する。主人公は島の外との人間と交流することで、潜在的に備わっていた絵描きの才能と、それまで抱くことのなかった負の感情を知る。様々な人との交流や絵描きを通じて、感情の表現という観点で世界を見つめ直す。くやしいという気持ち、他人よりスポットライトに当たりたいという気持ちを、「いいひと」の主人公は初めて知ることとなった。

一方で、一見平等な島に汚職や事なかれ主義が蔓延していることを耳にする。平等を追求するはずの問題点の指摘が、島の平穏を乱すものとされていた。主人公は本来の島を取り戻すべきだとして、監視委員の設立を提唱する。ところが、主人公の提唱は平穏を乱すものとされ、否決されるとともに島からの追放命令が下される。

行き場を失った主人公は、かつて勧誘調査で乗り込んだものの絵描きを頼まれることとなったクルーズ船で黄昏れる。クルーズ船の人々と二度目の交流を経て、監視制度を徹底するよりも人間のありのままを認めるほうが伸び伸びできることを知る。

そして仲良くなった乗務員に新しい島の設立を提案される。瀬戸内海の島はまだ沢山ある。鷹の島を卒業した祝いということでシャンパンを開けて、話はおしまい。

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