本田由紀(2008)「毀れた循環―戦後日本型モデルへの弔辞」東浩紀、北田暁大編『思想地図』vol. 2、日本放送出版協会。
戦後日本型循環モデルとは、会社と学校と家庭という三角形である。会社には正社員、非正社員、自営等が属し、家庭に属している「父」が働き、賃金を分配している。学校には、家庭の教育意欲に応えてつつ教育費を徴収し、「子」を労働力として会社に供給する。家庭には「母」「父」「子」がおり、主体的存在となっているのは「母」である。政府は会社に向けて産業政策さえすればよい。
しかし、共働きとなり、主体的存在であった「母」の役割が変わった。そして、会社では正社員や非正社員が多様化し、三角形に属さない「個人」が生まれた。戦後日本型循環モデルには、現状、ほころびが発生している。維持は不可能である。
リチャード・セネットは新しい資本主義への対抗手段を挙げている。いわば機械化する人間活動に残される人間味である。
-物語性(narrative)
全体の時間の中に現在の経験を位置づけること。
-有用性(usefulness)
献身的活動が認められること。
-職人技(craftmanship)
自らの仕事に対する誇りにこだわること。
これらの3点を新しい世代に指し示す必要がある。家庭ではなく、市民や政治がその担い手となるというのもひとつの手ではある。
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