木原誠二(2002)『英国大蔵省から見た日本』文藝春秋。
英国大蔵省に出向した財務官僚(当時)がそのときの経験をつづった本。政治改革や行政改革の行く末のヒントになる。たとえば、日本の公務員が「国民全体の奉仕者」であるのに対し、英国の公務員は「時の政府の奉仕者」である。すなわち、官と政の結節点は大臣にのみ許されており、行革のひとつである接触禁止事項がこれに該当する。但し、英国ではそうした制度に応じて周辺には歴史的慣行が整えられてきた。たとえば、「官僚が政策のいくつかの選択肢を、注記や予想される反対意見とともに提示し、大臣がその中から決定する」というよりはむしろ、「まず大臣が表明している政策や課題があって、官僚はそれに沿った行動判断を明確なストーリーとして助言する」ようである。このように、日英の比較文化を通じて国政のあり方を再考させられる。日本は革命的な改革が好まれるのに対し、英国では漸進的な改革が志向される。この差は制度に対する過剰な信仰に起因するのではないだろうか。すなわち、制度は完璧に良い制度でなければならず、「今後変更することはないし、この制度の下で良い結果が必ず出る」と思われることである。だからこそ、私的に解決すべき問題について官の責任を安易に問うてしまうのではないだろうか。
ほかにも英国政治の様子が描かれていて面白い。
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