アラン・グリーンスパン(2008)『波乱の時代 特別版―サブプライム問題を語る』山岡洋一訳、日本経済新聞出版社。
サブプライム・モーゲージについて詳しく解説しているが、サブプライムでなくとも他の証券がバブル崩壊を導いたに違いないという。
では、何が問題なのか。
銀行はいままで保守的な預金者のおかげで、貸出金利と預金金利の差とかでリスクを吸収していたが、保守的な預金者が減って、リターンを求めがちな投資家に依存するようになった。そのために証券会社だけでなく銀行までも資金調達に苦労し、金融仲介機能の健全性が失われて経済に大打撃を与える。いつもは証券か銀行かチョンボしてないほうが機能していたけど、今回は両方ダメ。
リスク管理システムがしっかりしていれば、金融システムが凍結することはないのだが、どうしてもモデル化が難しい。アニマル・スピリッツのような人間の非合理的反応を説明変数として加えたいところ。しかし、リスク管理を強化したところでバブルの時期が長く延びるだけ。投機の波を効果的に抑えることは不可能なので、市場が常に十分な柔軟性と回復力を持ち、保護主義や硬直的な規制に縛られておらず、危機のショックを吸収し緩和できるようにしておくべきと主張する。必要なのは取り締まりの強化だけ。
非金融セクターは低い長期金利を背景に財務状況は改善済みであった。事業を拡大しても満足できる利益率を確保できそうになかったからである。現在の非金融セクターは、借入れの難しさよりも売り上げの落ち込みを心配している。
市場の知識という面では、金融規制当局は民間のリスク管理者に劣る。新BIS規制が民間のリスク評価モデルを参考にしたように、今後も民間による市場慣行が官製ルールとなる。民間のリスク管理の仕組みを改善するしかないが、市場は既に改善の兆候が、deleverageや流動性の低いABSの需要減少に現われている。
公的資金は、優良な担保を提供する金融機関には融資しても問題ない。しかし、闇雲に救済するとなれば、too big to failの見解が浸透して金融システムを歪ませてしまう。民間のリスク管理は数十年に一度の事態以外ならば耐えられるが、そうでなければ中央銀行が頑張るしかない。政府としては、FRBの財務基盤や金融政策に影響がないようにすべき。ベアスタ救済で作った手続きを法制化し、救済の条件を規定し、制限する。システミック・リスク対策として財務省権限の公的資金投入の透明化、RTCのような金融仲介機関の破綻処理組織の整備を。
デリバティブの規制は良くない。闇雲な規制の強化もナンセンス。CDSは役に立っているし、監督体制を確立した国も金融危機に対応しきれてない。ただ、金融機関は適切な資本と流動性の余裕を持ち、予想外の事態に耐えられる能力を備えるべき。
バブルが膨らむのは、信用がありあまって長期金利が低くなっていたから。過去の経験では、深刻な信用危機によってデフレが発生する。しかし、いまではマイルドなインフレだ。エネルギーや食料品などの商品価格の高騰からだ。中央銀行は今後、インフレに悩むだろう。アメリカの長期金利は10%を超える一方、株式や不動産など収益性資産の利回りは低下するだろう。(・・・って原油価格がいま下がっているのは、一過性のものなのか?)
長期国債は上がってきているかもしれません。
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