2009/02/07

中島(2007)

中島誠(2007)『立法学―序論・立法過程論』法律文化社。

国会の実際を中心に展望している。

国会は立法機能を持つが、閣議の前に行なわれる与党審査(党内の同意)と国会の前に行なわれる国会対策(与野党の合意)さえあれば、その後のプロセスは儀礼であり、茶番劇である。とくに新聞では、「特落ち」の防止、「しばり」、「観測記事」、「番記者」などから、この水面下の動きは透明に報じられていない。しかし、テレビでは話題性が重視される。事実や論点が1軸の善悪という図式に単純化され、劇場型・ワイドショー型民主主義を演出する商業主義に陥らないようにしなければならない。

まず、法律立案の段階では行政機関から生まれる。(内閣提出法案)しかし、ルーティンワークに忙殺される余り、精神が腐り、なおかつ評価されるような立案ができなくなっている。調整型・思いつきの政策が多く、前例踏襲主義から脱却できない。プシンシパルたる政治家のエージェントであり、議決の拒否、人事への介入、生涯賃金の担保などを握られることで自主性を侵害される。

とくに強い影響を持つのは、いわゆる族議員(省庁別に分けられた自民党部会)である。こうした族議員に対して、様々な利益団体が規制政策、分配政策、再分配政策に働きかける。日本の利益団体の特徴としては民間大企業労使連合が優位で、その周りにいくつかの対立軸(平和、福祉、環境、消費者保護など)がある構造となっていた。しかし、新保守主義と新自由主義の強まりや懐柔から対立は自然消滅しつつある。しかし、経済構造の変化から民間大企業労使連合自体が弱体化してきており、ここで台頭しつつあるのは地方六団体などの地方であるらしい。

政治家が権力を運用することは3種類に分けられる。地元の面倒→票、正論vs俗論、政局と馴れ合いである。(政治家主導ではなく内閣主導という意味での)政治主導や行革の鍵は、ここにあるのではないか。ちなみに野党議員についてはラバースタンプにすぎないとされるが、ヴィスコシティという意味で影響力がある。

では、国会の意味は何か。それはアリーナ議会である。争点提示機能や行政府監視機能を持つ。

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